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<Entrevista> Fábio Torres ファビオ・トヘス

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7月9日(火)と10日(水)、ブルーノート東京で渡辺貞夫のコンサートが開催された。コンサートは今年発売されたブラジル録音による新作「オウトラ・ヴェス~ふたたび~」(ビクター VICJ-61685)ツアーの一環で行われたもの。バンドは、同アルバムの参加メンバーを中心に、ブラジルから迎えられたミュージシャンで編成されていた。

50年代から活躍するアルトサックス奏者カゼーが参加した「ブラジルの渡辺貞夫」(68年)。親交の深かったトッキーニョとの共演作「メイド・イン・コラソン」(88年)。「ライヴ・アンダー・ザ・スカイ」で同じ舞台に立ったエリス・ヘジーナに捧げられた「エリス」(88年)のプロデュースは、エリスの夫でもあったセーザル・カマルゴ・マリアーノが努めている。

これまでにも渡辺貞夫は、幾多もの名うてのブラジル人ミュージシャンと共演してきたが、今回の来日公演のバンド・メンバーもまた、凄腕、気鋭揃いだ。

ピアノを担当したFábio Torres ファビオ・トヘス(トーレス)もまた、現在のブラジル音楽を支える重要な音楽家のひとりだ。

<ファビオ・トヘス>

1971年に生まれたファビオ・トヘスは、5歳の頃から音楽の勉強を始めたという。17歳でナイトクラブなどで演奏をはじめ、いくつかのバンドに参加したのち、1993年にBanda Mistura e Manda バンダ・ミストゥーラ・イ・バンダでCDデビューを果たした。

同時に、Ana de Holanda アナ・ヂ・オランダ、Vania Bastos ヴァニア・バストス、Cekia セリア、Hailton de Horanda アミウトン・ヂ・オランダ、Rosa Passos ホーザ・パッソス、Mariana Aidar マリアナ・アイダール、Giana Viscardi ジアナ・ヴィスカルヂなど、他ジャンルに渡るアーティストをサポートしてきた。

現在、Paulo Paulelli パウロ・パウレリ(ベース)、Edú Ribeiro エドゥ・ヒベイロ(ドラムス)と組んでいるインスト・バンド、Trio Corrente トリオ・コヘンチでは「コヘンチ」(03年)と「Volume 2」(10年)の2作を、ホーザ・パッソスのバンドメンバー3人で「Celso de Almeida(セウソ・ヂ・アウメイダ)、Fabbio Torres、Paulo Paulelli」(08年)、そして、初のソロ名義作品「Pra Esquecer das Coisas Uteis(プラ・エスケセール・ダス・コイザス・ウテイス)」(08年)などの作品を発表している。

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ファビオは基本的にはインストゥルメンタルの音楽界で活動しているが、MPBの諸作品でもひっぱりだこだ。初のソロ・アルバム「プラ・エスケセール・ダス・コイザス・ウテイス」は、曲ごとにゲスト歌手を迎えるという贅沢な作りとなっているが、参加しているのは現在のMPB界の最前線で活躍している豪華な顔ぶれだ。

「本当に素晴らしい歌手ばかりなんだ」

「Tatiana Parra タチアナ・パーハは、とても難しい曲を歌っている。音程がいっぱい入っている曲なのに、1回歌っただけで歌いこなしてしまった。彼女の技術には驚かされるよ」

「Luciana Alves ルシアーナ・アウヴィスはエモーショナルに、心から歌う歌手だから信頼していた。彼女は素晴らしい心の持ち主なんだ」

「Fabiana Cozza ファビアーナ・コッツアは何度も共演していて信頼しているサンバ歌手。サダオとも共演しているね」

「唯一の男性歌手Renato Braz へナート・ブラスも、僕が想像したとおり、きれいな声で歌ってくれた」

しかも、これらの曲の多くは、ファビオ自身が作曲も作詞も手掛けている。

「僕は曲を作るのが好きで、いつも曲を作って書いている。そのうち自分の書いた曲にも歌詞をつけたくなって、録音をするわけでもなく、どんどん書いていたら数が溜まってきたんだ」

「書いているのはほとんど自分自身の人生、日常。楽しいことや悲しいこと...。だから伝記みたいなものだね」

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また、ファビオはさまざまな作品で、アコースティック・ピアノと並び、エレクトリック・ピアノのフェンダーローズをよく使用している。そのため、ローズ・ファンの間でもファビオの人気は高い。

「最初にフェンダーローズを聞いたのは、70年代のアメリカ合衆国のクロスオーバー・ジャズだったと思う。チック・コリアとかね。ブラジルでもいろんな人が弾いていた。Azymuth アジムチ(アジムス)も大好きだった」

フェンダーローズなどエレキピアノは80年代にはシンセサイザーに取って代わられ、多くの国では、今ではヴィンテージ楽器となっている。ところがブラジルでは、ファビオに限らず、現在もなお多くの鍵盤奏者がフェンダー・ローズを好んで使っている。

「実はフェンダーローズは、ブラジル音楽のリズムを演奏するのにとても適しているんだ。一音一音を切り離して歯切れよく演奏できるから、パーカッションを扱っているような感じでリズミカルに弾けるんだ」

「それでいて、リズミカルだけど、音はとても滑らかで優しいのも魅力だね。そんなところもブラジル音楽にとても合うんだと思う」

フェンダーローズの演奏者たちの話から、話題はファビオが影響を受けた音楽へと移っていった。

「トン・ジョビン、エギベルト・ジスモンチ、エルメート・パスコアウ...。ソングライティングの面ではエドゥ・ロボ、ギンガ。他の楽器の演奏者からも、とても影響は受けているよ。ジャコー・ド・バンドリン、ジャクソン・ド・パンデイロからはとても大きな影響を受けている」

実はファビオの場合、鍵盤奏者の演奏よりも、他の楽器の演奏者からの影響の方が大きいのだという。

「ピアニストは、パーカッションとヴィオラォンの影響が大きいんだ。左手ではヴィオラォンのフレーズを弾くことがあるよ」

ところで、ファビオがふだん活躍しているジャズなどのインストゥルメンタル音楽のシーンは、これまでブラジルではリスナーも限られていてマーケットが小さかったが、好景気も影響しているのか、近年、ゆるやかに、ではあるが、その需要が伸びつつある。

「地方都市や小さな町でもジャズ・フェスティバルが行われるようになっているんだ。たとえば Rio Grande do Sul リオグランヂドスウ州のPeotas ペロッタスでは2011年からジャズ・フェスティバルが始まって、今年、3回目が開催されたばかりさ」

09年にはミナスジェライス州ベロオリゾンチと連邦区ブラジリアで、2012年には、リオデジャネイロ州ペトロポリスやサンパウロ市郊外ピラシカーバでも、ジャズフェスが開催された。

「インストゥルメンタル音楽をとりまく状況はこれまで恵まれていなかったけど、だんだん良くなっているよ。すごく実感している」

さて、今回共演した渡辺貞夫について。

「サダオ(渡辺貞夫)と初めて会ったのは2008年。バーデン・パウエルの追悼コンサートで、日本でサダオと共演したときのこと。バーデンの息子マルセウ・パウエルやファビアーナ・コッツァと一緒に日本で演奏したんだ」

「だからサダオと日本で演奏をしたのは、今回で2度目。昨年は、初めて録音もしたんだ(「オウトラ・ヴェス」)」

「サダオの音楽はブラジルからの影響がとてもある。ブラジル音楽のメロディ、ブラジル音楽の心からの、ね。一緒に演奏するととてもそれがよくわかる」

アルバム「オウトラ・ヴェス~ふたたび~」の収録曲は全て渡辺貞夫の作曲(一部共作曲あり)とアレンジによるものだが、スタジオではミュージシャンたちに自由に弾かせてくれたのだという。

「ほんとうに自由に演奏させてくれたから、皆でサダオの音楽の中に入り込んで演奏していたよ。スタジオの中で起こったことをサダオも気に入ってくれたと思う」

(ステージ写真/佐藤拓央 Takuo Sato、文/麻生雅人 Massato Asso、取材協力/ビクターエンタテインメント)

VICJ-61685

渡辺貞夫「オウトラ・ヴェス ふたたび」
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A002549.html

ブルーノート東京 渡辺貞夫公演「オウトラ・ヴェス ふたたび」
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/sadao-watanabe/

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