電子選挙、電子納税はあたり前!?畏るべし! ブラジル金融のIT化と透明性

2013年 10月 24日

電子選挙投票機

私はブラジルを新興国と呼ぶのには、かなり抵抗と違和感がある。BRICsと呼ばれるが、他の3カ国(南アフリカを含めると4カ国)とブラジルは明らかに違うところがいくつかある。欧米型民主主義で4年に一度きっちりと選挙があり、90%以上の投票率で、電子投票により大統領も直接選挙される。そこには、新興国にありがちな不透明なところがほとんどない。アメリカよりも透明度は高い。

また、テクノロジーの面においても自国で世界第3位の航空機メーカーを持っている。日本ですら開発に四苦八苦している中型機のメーカーを持っている新興国というのもピンと来ない。そして、もっとも驚くのが金融システムである。知識としては知っていたが、実際ブラジルで銀行口座を開け、クレジット&デビットカードを持ち、会社を設立して、その徹底ぶりに驚いた。

80年代から90年代初頭の年率3000%のインフレを乗り切るために、大型のシステム投資を繰り返したブラジルでは、金融のオンライン化も進み、日本の税務署もうらやむ、90%以上が電子納税である。その仕組みは、ある意味社会主義国ではないかというほど、政府コントロールのもとにあり、極めてうまくできている。いったん口座を開設したら、同時に中央銀行にも、税務署にもオンラインとなる。

個人はCPF、法人はCNPJという納税者番号が振られ、お金が絡むあらゆる場面で使われる。例えば個人がスーパーなどで買い物をした際も、レジでCPFをたずねられ、ナンバーを言うと打ち込まれる。

ほとんどの人がカード払いであるが、デビットであれ、クレジットであれ、銀行口座と連動しているわけで、それがオンラインで処理されて、銀行の個人のサイトを開けると、すべての取引が記載されると同時に税務署にも送信されている。多くの人は同じ口座に給与も振り込まれ、様々な支払の自動引き落としもされている。そうなると、銀行口座がほとんど家計簿の役割をしており、同時にそれに少し手を加えれば、確定申告もできてしまうわけだ。

法人の場合も、まず税務署が銀行経由で発行している請求書、領収書を使わねばならないわけで、そのこと自体は他の新興国でも見られることだが、ブラジルはそれらがすべてオンラインでの処理となる。銀行への入金も出金もすべてクリアになり、しかも法人を設立して、税務署に登録したら、月次で申告・納税しなければならない。

有限会社(LTDA)であれば、年末に決算などをする必要はなく、会社の状況は丸裸である。

ブラジルでは、居住権を持っていない外国人は銀行口座を簡単には開けられないし、法人の設立も居住者が1名代表者の中に必要なため、簡単ではないため、なかなかこの部分は表に出ないわけだが、ここまで進んでいる国を新興国と呼べるだろうか?

(文/輿石信男/クォンタム、記事提供/モーニングスター、写真/Fabio Rodrigues Pozzebom/ABr)
写真はブラジルの電子投票機、2010年時点のもの