ソチ五輪ではボブスレー女子、初参戦。ブラジルのウィンター・スポーツは広がるか

2014年 02月 25日

ボブスレー女子2人組

今回はソチオリンピックを通して思ったことについて。

ソチは雪不足に悩まされ、連日ポカポカとして陽気が続いていた。2月12日のオリンピックパークは最高気温17度を記録して、南国の選手にも恵まれた(?)環境に見えた。しかし、ブラジルにメダルはもたらされなかった。

ブラジル人の多くは、冬季オリンピックをほとんど観ないという。我が同僚たちに至っては興味もない様子。理由を聞いてみると、上位で活躍できるブラジル人選手がいないからだそうだ。

確かに13名のブラジルのアスリートがソチオリンピックで残した結果は、多くの人々から見れば大したことではないかもしれない。しかしそこでは、ブラジルの選手たちが冬季オリンピックで活躍できる場所を求めて必死に戦っている姿が見られたに違いない。

気候が温暖な部分が圧倒的に広いブラジルでは冬のスポーツは主流ではなく、テレビでもLIVE放映はほとんどなく、新聞のニュースでもあまり大きくは取り上げられないのだそうだ。

また、実際にプレーするアスリートにとっても、練習する場所が近辺にはないため、多くの場合アルゼンチンやチリ、場合によってはヨーロッパなどにまで行かなければ練習ができない。練習できる環境を整えて維持するのにも、かなりの資金がかかることになる。結果的に、ウィンタースポーツの環境に適した国外に拠点を移すアスリートも少なくなく、ブラジル人にとってウィンタースポーツは 外国に住んでいるブラジル人のためのスポーツ、といった認識もあるようだ。

政府サイト「ポータウ・ブラジル」によると、ブラジルが初めて冬季オリンピックに出場したのは1992年のアルベールビル大会から。その後、リレハンメル、長野、ソルトレイクシティ、トリノ、バンクーバーに出場したものの、冬季オリンピックでは未だにメダルは取れていない。

しかし、それでもブラジル人アスリートの冬季オリンピックでの活躍の幅は広がりを見せている。冬季オリンピックへのブラジル人アスリートの参加は、2002年のソルトレイクシティ大会が最も多く、10名のアスリートがアルペンスキー、クロスカントリースキー、ボブスレー、リュージュの4種目に参加した。2010年のバンクーバー大会では、5名のアスリートがアルペンスキー、クロスカントリースキー、スノーボードの3種目に参加したという。そしてソチでは、過去最大の13名が参加。ボブスレー女子2人乗りは初参戦となった。

ブラジルが躍進を続けるにつれ、環境に恵まれたアスリートが増えればブラジルのウィンタースポーツもより強くなるだろうし、国外などでウィンタースポーツに接するブラジル人が増えれば関心も高まるだろう。ブラジルの冬季オリンピックでのメダル獲得も、そう遠くはないかもしれない。

(写真/Getty Images)
写真はソチオリンピック、2014年2月19日、ボブスレー女子2人乗り競技。Fabiana Santos ファビアナ・サントス(前面)と Sally Mayara da Silva サリー・マヤラ・ダ・シウバ

著者紹介

加藤元庸 Motonobu Kato

加藤元庸 Motonobu Kato
1980年代後半にインディーズ映画制作会社エンボディメントフィルムズを創設。後にワーナーブラザースで宣伝に関わった後、ロスアンゼルスで多くの映画製作に携わる。 カナダやメキシコでのロケ地経験を通して、ブラジルで日本のCM制作に関わり、ブラジルに魅せられる。「TVグローボ」の日本キー局アイピーシーワールドに参加。リアルなブラジルの慣習と日々闘いながら、新プロジェクト開発部長として勤続中。
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