ワールドカップを控えるブラジル、15,000以上の家族を移住。中には強制移住も!?

2014年 03月 3日

favelametro

ブラジル、リオデジャネイロでは、ここ数年間で洪水や火事のため、多くの家族がファヴェーラ(スラム地区)から移動した。リオデジャネイロやサンパウロなどの都市部では、スラム地区に住んでいた住人達の再配置計画が進められてきた。

しかしこの計画は、各大都市の生活改善、安全な街の再構築が目的で、それは2014年のワールドカップや2年後の夏季オリンピックを開催する前に、”醜いもの”を一掃しようという意味がったのではないかと、The Center for American Progress Action Fundが運営するブログ「thinkprogress」(2月28日)が記している。

同団体によると、政府が全国のスラムから15,000以上の家族を移転させたことをブラジル当局者が認めているとのこと。

夏季オリンピックが始まる頃には、その数は10万人以上に昇る可能性があり、少数サンプルながら300人未満が、リオのオリンピック村を作るために再配置されているという。

政府は大多数は災害多発地域の危険から移動しているのだと主張しているが、アムネスティ·インターナショナルのような人権団体は、ブラジル政府は住人たちの居住条件を悪化させながら、適切な補償もなしに、無理やり家族を移動してきたと言って、これらの問題を争っていると、AP通信が報告しているという。

市当局は、過去にファベーラに住んでいた15,000家族を移動させたことを認めたが、致命的な土砂崩れが発生しやすい地域から人々を救うために行われたと主張し、ワールドカップやオリンピックと関係なかったと主張した。エドゥアルド・パエス・リオ市長の事務所も声明の中で、これらの移住はW杯に関連してないことを協調した。

アムネスティブラジルは、リオでは、約19,200家族が2009年以来、家から放り出されてきたと主張して異を唱えている。スラム居住者のための擁護団体ポプラール・コミッチも、ワールドカップとオリンピックの影響を受けて、この先も含めて、約10万の人々が移動させられるだろうと予測しているという。

アムネスティブラジルは、麻薬ギャングや他の犯罪組織からスラムの治安を取り戻すことを目的とする、意欲的に見える政府の計画があったとも説明している。同プログラムのお陰でいくつかのスラムでは犯罪が減少し、生活環境が改善されたと伝えられている。

しかしこの現象は、政府がプログラムの効果がプラスになっていることをPRしたが、それは間違いなく主要な予算や考え方にも多大に影響を及ぼすことになった。アムネスティ·インターナショナルは、常駐している治安維持部隊UPP(ウー・ペー・ペー)など大規模な警察の関与がスラム一掃に一役買ったことは間違いと主張している。

警察がファベーラの住人を容疑者として、たくさんの令状を取り寄せてきたことや、令状なしの家を襲撃することもあったと、マイナス面も取り上げた。広範に渡る警察の残虐行為が確認されており、リオの貧民街から姿を消して死んだアマリウド・ヂ・ソウザさんのケースは、物議を醸し、デモ抗議の理由の一つにもなった。

とはいえ、別の見方もある。ブラジル政府は、経済成長加速計画(PAC)の一環として進める低所得者層向けの住宅取得促進計画(「Minha Casa Minha Vida(私の家、私のくらし)」)や、「貧困のないブラジル」計画(Brasil sem Miseria)を通じて貧困の撲滅に取り組んでいる。富の再分配ともいうこともできそうなこれらの計画を通して、建設関連市場の活性化や雇用創出、恩恵を受けた住人たちのによる国内消費の拡大など、成果として受け入れられている面もある。

公共プロジェクトのありかたに関しては、実際にどのように実行されどんな結果をもたらしているか、正確な情報をもとにした判断が必要のようだ。

(文/加藤元庸、写真/Tania Rego/Agência Brasil)
写真はリオのファヴェーラ・ド・メトロ。2014年1月7日(金)、撤去をめぐり抗議運動も起こっている