テレビドラマは毎日決まった時間に始まらない!? ブラジルのテレビ事情(1)

2014年 04月 2日

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ブラジルには日本と同じように、民放地上波が5チャンネルあります。しかも地上波デジタルは日本方式を入れており、日本ととても親密な関係にあります。しかし、放送文化は大きく違います。

各チャンネルの視聴率競争は同じです。しかし、その争いの展開が大きく異なっています。

ブラジル最大の放送網を持つGLOBO(グローボ)局が最も視聴率が高く、1社独走状況です。

昨年放送のドラマでは最高視聴率75%を記録しました。平均視聴率が40%という国民的ニュース番組もあります。今はもう無くなっているNATIONAL銀行が以前スポンサーをしていた「JORNAL NATIONAL(ジョルナウ・ナシオナウ)」という番組です。スポンサーの銀行は無くなりましたが、番組の知名度が高いため番組名を変えないということです。

今年6月に開催されるFIFAワールドカップブラジル大会もこのグローボが単独で放送権利を取得しています。まさに1強4弱という状況です。

ところで、ブラジルにはテレビの番組表が無い、しかも番組は決まった時間に始まらない、とよく言われます。そのためか、日本ではこんな会話がされます。

「だってブラジルだからねぇー」
「ラテンのノリだから、しかたないよ!」
「時間にルーズだからねぇ、ありそう」

ちょっと、ちょっと、それ、違いますから!

時間にルーズだからテレビ番組の放送時間が遅れる訳ではありません。
たまに予定より早く始まることがあります(それも困るけど!)。

ブラジル人はテレビを観る常識として、番組の時間をだいたい覚えている、そして少しくらいの前後には慣れており、番組表自体を使わないことに慣れています。とはいえ、以前とは違い、近年はインターネット上で番組表を常時見られるようになっており、利用者も増えてきているようです。

実はこの、テレビの番組表がない、決まった時間に始まらないという習慣の裏には、高度な視聴率競争と、番組を作る上での合理性が隠れているのです。

日本と違い、ブラジルのテレビドラマは壮大です。4月から始まるドラマは12月に最終回を迎えます。約9か月間で完結します。

ドラマの放送時間は1話45分~50分程度と日本と同じです。しかし、それがなんと1週間で5回、月曜日から土曜日まで連続で放送されます。9か月で総数は200話になります。そうです、ひとつのドラマは約200話もかかって完結するのです。

しかも毎日、18時、19時、21時と3つの時間帯で、それぞれ別のドラマが放送されます。おそらく放送スタート時には、いつ番組が終わるのか誰も知りません、監督も役者も知らないでしょう。

制作は映画村のような広大な敷地の撮影所で24時間体制で行われています。

番組の長さは1話毎、決まった時間尺があるわけではなく、シーンの切れ目が1話毎の切れ目です。その為、毎回45分から50分という幅を持った番組の長さになります。

日本の場合はキッチリ51分○○秒などと決まったいるので、秒刻みの時間調整をシーンの切れ目を撮影と番組の編集でつくります。ブラジルはシーンの終わりが“撮影おわり”で、時間調整の編集はしません。この番組の切れ目は5分~10分間隔で設けているそうです。

まったくもって合理的です。そもそも、この規模のドラマの時間調整の編集を毎日行うためには、相当の労力が必要となるでしょう。

そんなグローボのドラマの作り方と放送時間は、他局の番組作りにも影響を及ぼしています。そのお話は後編で!

グローボは、日本でもスカパー514ch「グローボインターナショナル」で24時間、ポルトガル語で放送しています(視聴申し込みは03-6436-9200まで)。

ポルトガル語を勉強している方、実際に今のブラジル人が使っている表現をマスターしたい方、ブラジル国内の主要なサッカー試合放送を観たい方、ブラジル人との会話ネタを探したい方、ブラジル国内のことをいち早く知りたい方などにも、おすすめです。

(文/石原聖士、写真/TV GLOBO)
写真はTVグローボ局のマーク