やはりブラジルにとって、サッカーは国技以上だった!?

2014年 07月 1日

ブラジルサポーター

やはりブラジルはブラジルであった。

6月12日、サンパウロにおいて、サッカーのワールドカップ・ブラジル大会が始まったが、開催前にデモやストライキに打ち消されて盛り上がらないように見えていたのが嘘のように、ブラジル中が一気にヒートアップした。

ブラジルの試合のある日は、みんな一斉に仕事を止め、老若男女、ほとんどすべての人がブラジルのユニフォームを着て、ブブゼラなどを鳴らしながら、パブリックビューイング会場やオープンバーなど、みんなで一緒に観戦できる場所に三々五々集まり、試合が始まる前からお祭り気分になっていた。

ワールドカップが近づくと街の至るところで売り始めたブラジル代表のユニフォームは、てっきり観光客向けに販売しているものだと思っていたが、実はブラジル人向けがメインであることも、ブラジルの初戦の日にわかった。そして、日ごろ車だらけで渋滞のひどいサンパウロやリオの主要道路はブラジル戦が始まるとほとんど車が走らず、ガラガラになったのには驚いた。やはりブラジルにとって、サッカーは国技以上のものであった。

局地的にはデモも行われているが、昨年のコンフェデレーションズカップの時のように、連鎖的に全国各地にうねりを打って広がりを見せたようなものではなく、一部の先鋭化した人たちが暴徒化しているだけで、昨年デモに参加した人のほとんどは今、ブラジル・セレソン(代表)の活躍を一体となって応援している。

政治家であれば、これを見ればやはり、サッカーをはじめとした人気スポーツを政治に使いたくなるのは無理もないとも思ってしまう。

しかし、このワールドカップ期間中の6月19日に行われたCNI/IBOP(ブラジル世論調査・統計機関)の調査によると、ジルマ・ルセフ労働党政権の支持率が、今年3月の36%から、昨年のデモが多発した時と同じ31%まで下がっていることがわかった。

ワールドカップ後の今年の一大イベントといえば、やはり10月の大統領選挙であり、もしブラジル代表がワールドカップで早めに敗退するようなことがあれば、再び不穏な空気が流れ、大規模なデモが起こらないとも限らない。逆に、もしブラジル代表が優勝をすれば、国を挙げた祝賀の高揚で大統領選まで引っ張れるかもしれない。

どちらにしても、ワールドカップ、オリンピックというスポーツを使って、政権を維持し、大統領選を勝ち抜こうと思ったであろう労働党は、実はそれが両刃の剣であったことに気づいたのではないだろうか。

(文/輿石信男/クォンタム、記事提供/モーニングスター、写真/Tomaz Silva/Agência Brasil)
写真は6月28日、リオのファンフェスト会場でブラジル代表を応援するサポーター