ブラジル出身の現代アート作家ヴィック・ムニース、新作は「砂粒に描いた作品」と「がん細胞で描いた作品」

2014年 10月 26日

ヴィック・ムニース2014

ブラジルを代表する現代アート作家のひとり、ヴィック・ムニースの新作個展がnca | nichido contemporary artにてはじまった。

これまでも、砂やチョコレート、廃棄物など、さまざまな素材を使い、”素材とイメージの関係性”を表現してきたヴィック・ムニース。

ごみ廃棄場ので生活するリサイクル品回収業者たちとコラボレーションして制作したシリーズでは、回収業者たち自身を肖像の題材として描き、その制作過程は映画「ごみアートの奇跡」でも紹介された。

そんなヴィックが「SMALL」展と題された本展示でみせるのは、「サンドキャッスル(砂の城)」と「コロニー」というふたつのシリーズで制作された作品たち。どちらも、近年に手掛けていた巨大作品とは打って変わって、タイトル通り、小さな素材と向き合って作った作品だ。その素材に、まず、驚かされる。

本展示の作品について、「The Creators Project」のプロジェクト紹介と本人のコメントを元に紹介する。

「サンドキャッスル(砂の城)」は、なんと、ひと粒の砂に、城を描いた作品だ。

サイズは500メートル以上になることもあった「アースワークス」シリーズなど作品が巨大化してい中で、次第にヴィックの作品のドローイングは常にヴィックの頭の中に存在するようになっていった。そしてそのドローイングを、今度は限りなく小さなもので表現したくなったという。

そんなことをヴィックが思い始めていたとき、たまたま出会ったのがマサチューセッツ工科大学のマルセロ・コエーリョだった。

制作には、通常、集積回路を加工するために電子産業で利用される、集束イオンビーム(BIM)が使われた。肉眼では見えないこの作品は、写真に撮影されて提示される。砂粒の表面に描かれた城は、まるで岩山の上に立つ城に見える。

なんの前知識もなくこの作品を見れば、この作品はありふれた城の絵にしか見えないかもしれない。ところがそれがひと粒の砂に描かれていると知ったとき、絵は、一転して見る者の常識をひっくり返してしまう(次ページへつづく)。

(写真・文/麻生雅人)
写真は10月24日(金)、来日したヴィック・ムニース。背景は「サンドキャッスル(砂の城)」シリーズのひとつ

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