ブラジル出身の現代アート作家ヴィック・ムニース、新作は「砂粒に描いた作品」と「がん細胞で描いた作品」

2014年 10月 26日

ヴィック・ムニーズ細胞アート

©Vik Muniz
Liver(Hepatocytes) cell pattern, series of Colonies
2014, S; 101.6 x 101.6 L; 180.3 x 180.3 cm, Digital C-print

今回の展示でみられるもうひとつのシリーズが「コロニー」シリーズの作品だ。こちらもまた、極小の世界で生み出された作品たち。その素材は、なんと、微生物。

こちらでヴィックとコラボレーションをしたのは科学者のタル・ダニーノ氏ヴィックとタルが試みたのは、微生物を配置して美的なパターンから成り立つアートを創り上げることだった。

使われた微生物は、生物の細胞。それも、がん細胞や、ウィルスに感染した細胞が使われた。タル氏自身も学生時代から、細菌を使った映像を作り、その美しさに気づいていたという。タル氏の細菌の映像を見たヴィックが共同制作を申し出た。

タル氏は「がんは非常に複雑なことばで、強い感情を呼び起こします。普通の生活の中では、死を連想させる、最悪の言葉のひとつでしょう。しかし研究室でがん細胞を育てている科学者である自分にとっては、実験を成功させるためにはがん細胞は無事に育ってもらわなければ困りますし、汚染されて死んでしまうことは最悪の事態です。がんとの関係性が特殊だといえるでしょう」と語る。

ひとつのがん細胞の中で多くの細菌たちが、まるで踊っているかのように元気に活動しており、その細胞を並べて、ヴィックとタルは美しい絵を創り上げた。

「とても恐ろしく、別世界にあると思っていたものが、美を引き出すものに生まれ変わるのです」とビックは言う。

このプロジェクトでは、まずは、生きている細胞たちを整然としたデザインに並べてみることからスタート。そこから何が生まれるかを試してみて、より幅広い図版へと作品を広げていったという。今回ギャラリーでは、初期段階の整然としたデザインや、集積回路のデザイン、花の図版などが展示されている。

ちなみに、同作品の収益はがんの研究に活用されるという。

<ヴィック・ムニース「SMALL」展>

場所:nca | nichido contemporary art
東京都中央区八丁堀4-3-3, B1
B1, 4-3-3, Hatchobori, Chuo -ku, Tokyo, 104 0032, Japan
tel 81-(0)3-3555 2140
会期:2014年10月24日(金)~11月29日(土)
営業時間:火~土 11:00~19:00 (日・月・祝 休廊)

(文/麻生雅人、作品画像提供/写真提供/nca | nichido contemporary art)

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