商社マンに聞く、ブラジルで犯罪に巻き込まれないようにするコツ

2014年 11月 14日

プライア・ダ・フォッカ ブージオス

日本政府観光局(JNTO)が発表している「2009年~2013年 各国・地域別 日本人訪問者数 (日本から各国・地域への到着者数)」によると、ブラジルを訪問した日本人は、2011年には63,247人だったのが、2012年には73,102人と増加しているという。

2014年にはワールドカップもあったので、さらに数字は伸びている可能性がある。そして、旅行者が増えれば気なるのは安全性だろう。

日本の外務省の「安全対策基礎データ」でも「ブラジルは世界的に見ても非常に高い頻度で一般犯罪が発生しています」と記している。しかし、筆者の周りには何度もブラジルと日本とを行き来している人が多いが、一度も危険な目にあったことがないという人は決して珍しくない。行動範囲や行動する時間など、安全に気をつければ犯罪に巻き込まれる可能性を小さくすることができるのだろうか。

隣国のアルゼンチン在住の商社マンで、ブラジル各地の事情に詳しいアンジェロ・ブラス氏に、ブラジルの中で安全だと感じる旅行先について尋ねた。ブラス氏はブラジルのみならずヨーロッパや北米、中米を飛び回っており、全旅行行程35万マイルに及ぶという。

「アルゼンチンに近い南部エリアは、ブラジルの中でも比較的安全だと言われています。中でも、サンタカタリーナ州のサンフランシスコドスウ、ポルトベロ、ボンビーニャス、ガロパーバといった地域は犯罪率も低く、比較的平穏です」

一般的に、南部は比較的治安がいいといわれるが、ブラス氏はにとっても、印象は同じようだ。

「大都市と言われる中でも、サンタカタリーナ州のフロリアノーポリス市、ブルメナウ市、ジョインヴィーリ市などは、平和な町の代表格でしょう。リオグランジドスウ州では、グラマード市、カネーラ市など、山岳リゾート地が安全面で優れています」

では、リオデジャネイロ市やバイーア州のサルヴァドール市など、日本で人気の高い都市はどうなのだろう。

「これらの都市には比較的治安が良くないと言われる地域もありますが、普通に地元の人々は生活しています。あまり警戒しすぎて旅自体を楽しめなくなっては元も子もありません」

やはり同じ街の中でも、エリアや時間によっても安全の度合いは大きく異なるという。危険であると報じられている場所へは足を踏み入れない、人通りのない時間には出歩かないなど、気をつけるべきことを気をつけていれば旅行は楽しめるということなのかもしれない。

「一般的に、ブラジルの大都市は非常に高い犯罪率を持っています。サンパウロ市やリオ市では、高価な時計、宝飾品を身につけたり、超近代的なデジタルカメラや最新のiPhoneを持って外出することは控えたほうが賢明でしょう。暗い、寂しい通りを独りで歩かないというのも重要です。日が暮れたらタクシーで移動した方が比較的安全です」

またブラス氏は、自分がもし強盗なら、捕まるリスクをなるべく減らして”仕事”をするには、いつどこでだれを狙うかなど、犯罪者の立場に立って考えることも「自己防衛意識」をより高めるのには役立つという。

「人の多い観光地では、そこにいる人たちとなるべく近い恰好をすることも安全に過ごす手段です。ビーチサンダルやショートパンツの人が多い場所でスーツを着て目立っていると目をつけられやすくなるかもしれません」

ブラス氏の経験上、比較的安全と考えられる沿岸都市は、下記のとおり。

フロリアノーポリス市(サンタカタリーナ州)
グランジ島(リオデジャネイロ州)
ブージオス(リオデジャネイロ州)
モーホ·ジ·サンパウロ(バイーア州)
ポルト・ジ・ガリーニャス(ペルナンブッコ州)

ブラス氏が安全だと紹介してくれた街を、ブラジルの学生が制作・運営している全国盗難検証マップで調べてみた。結果は以下。同サイトでは、ブラジル全国の各都市における、過去90日間の犯罪件数が表示される。

フロリアノーポリス市(サンタカタリーナ州)42件
ジョインヴィーリ市(サンタカタリーナ州)23件
ブルメナウ市(サンタカタリーナ州)3件
サンフランシスコドスウ(サンタカタリーナ州)1件
グラマード市(リオグランヂドスウ州)記録なし
カネーラ市(リオグランヂドスウ州)記録なし
ポルトベロ(サンタカタリーナ州)記録なし
ボンビーニャス(サンタカタリーナ州)記録なし
ガロパーバ(サンタカタリーナ州)記録なし
グランジ島(リオデジャネイロ州)記録なし
ブージオス(リオデジャネイロ州)記録なし
モーホ·ジ·サンパウロ(バイーア州)記録なし
ポルト・ジ・ガリーニャス(ペルナンブッコ州)記録なし

ちなみに、同サイトによると、リオデジャネイロ市で過去90日に起きた犯罪は205件、サンパウロ市は360件だった(2014年11月14日現在)。

(文/加藤元庸、写真/Rodrigo Soldon)
写真はリオデジャネイロ州ブージオスのプライア・ダ・フォッカ

著者紹介

加藤元庸 Motonobu Kato

加藤元庸 Motonobu Kato
1980年代後半にインディーズ映画制作会社エンボディメントフィルムズを創設。後にワーナーブラザースで宣伝に関わった後、ロスアンゼルスで多くの映画製作に携わる。 カナダやメキシコでのロケ地経験を通して、ブラジルで日本のCM制作に関わり、ブラジルに魅せられる。「TVグローボ」の日本キー局アイピーシーワールドに参加。リアルなブラジルの慣習と日々闘いながら、新プロジェクト開発部長として勤続中。
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