神戸出身の工藤めぐみさん、リオの名門サンバ団体の花形ダンサーとして活躍。7年目のカーニバル参加に向け猛練習

2015年 02月 8日

サウゲイロ

世界三大カーニバルのひとつといわれるリオデジャネイロのカーニバル(カルナヴァウ)の開催が迫って来た。カーニバルに出場する各団体は真剣そのもので練習を繰り広げている。

カーニバルに出場するリオのエスコーラ・ヂ・サンバ(サンバの団体)のひとつで、グルーポ・エスペシアウと呼ばれる一次リーグに所属する「サウゲイロ」の公開練習を訪ねた。

カーニバルで各団体は、毎年ひとつのテーマを掲げてパレードを行い、演奏される曲や隊列のコンセプト、衣裳なども、すべてそのテーマに沿って表現される。

サウゲイロが、今年(2015年)のカーニバルで掲げたテーマは、ブラジルの郷土料理。17世紀にゴールドラッシュで栄えたミナスジェライス州を舞台に、この大陸でもともと暮らしていた先住民族たちの食生活から、ポルトガル人が持ち込んだ食文化とが出会い、さらに金の採掘のために奴隷として連れてこられたアフリカ人たちが持ち込んだ食文化や宗教などが融合して、この土地独特の料理が形作られていった過程が物語として紡がれるという。

この日行われたのは、”エンサイオ・ダ・フーア”と呼ばれる公道での公開予行演習だ。カーニバルが近づくと各団体はクアドラ(練習場)を飛び出し、近所の道路を封鎖して本番のパレードさながらに練習を行う。

サウゲイロ

しかし、予行演習とはいえ、ダンスも演奏も本気で繰り出される。きけば、サウゲイロは昨年、ウニードス・ダ・チジュッカにわずか0.1ポイントという僅差で惜しくも優勝を逃していることもあり、今年は例年に増して勝利に向かう執念が強烈なのだという。

平日の水曜日の夜10時の、リオデジャネイロの市街地。バテリアと呼ばれる打楽器隊の爆音と、熱気。道路は見物客で埋め尽くされ、近隣のマンションの住民もベランダに出て歌い踊る。道路沿いの店のスタッフも仕事を完全に中断して、通りに出てパレードを応援する。

日本ではありえない光景が、ここブラジルでは当たり前となっている。街で暮らすひとりひとりの人たちのサンバに対する魂の込め方が、日本とは全然違うと肌で感じた。

ところで、パレードには数多くのダンサーが参加しているが、1団体の中でほんの数名だけが選ばれるパシスタと呼ばれるダンサーは、パレードの花形だ。パレードの最後のほうに登場して、観客を盛り上げる。

そのパシスタとして、2008年から6年連続、リオの名門サンバ団体サウゲイロで踊っている日本人ダンサーがいる。神戸でエスコーラ・ジ・サンバ「フェジョン・プレット」でリーダー・ダンサーを務める工藤めぐみさんだ。

工藤めぐみ

パシスタの選出は、毎年オーディションによって決まる。パシスタに選ばれ、初めて出場した2009年のカーニバルでサウゲイロは優勝を果たし、工藤さんもチームの勝利に貢献した。

その後も工藤さんは毎年リオに渡り、本場でダンスの腕を磨いてきた。パシスタを目指す大勢のダンサーと共に毎年、オーディションを受けて、2010年、2011年、2013年、2014年のカーニバルでパシスタとしてカーニバルに参加した。今年のカーニバルに向けても、昨年の暮れから来伯して猛練習の日々を送っている。

本番のパレードでは華やかな羽根飾りについた衣裳で踊るパシスタたちも、この日は演習のため、練習着でダンスに臨んでいた。しかし、練習着といってもサウゲイロカラーで可愛く作られていた。踊るたびに胸や腰のフリンジが揺れて、女性たちをいっそう引き立てる。練習着も全て、彼女たちの手作りだという。

工藤さんいわく、サンバのダンスは一度の練習やショーで2~3kgも体重が減ってしまうほどの運動量なのだとか。消費以上のカロリーを摂取しないと痩せていく一方なので、普段からたくさん食べるようにしているという。

「おもいっきり踊ったあとはお腹が減る」という工藤さんと共に演習後、記者も工藤さんの行きつけのハンバーガー屋に同行して彼女と同じ量を注文した。深夜の少ししょっぱいハンバーガーは、サンバを見た後の興奮も手伝って、格別に美味しく感じた。

エンサイオ(練習)を見ると、やはりそのチームを応援したくなる。今年は優勝できそう? と、サウゲイロのメンバーやファンにたずねた。常に前向きで、何事につけ自信たっぷりな人が多いブラジルだけに、「もちろん」という答えが返ってくるとばかり思っていたが、「もちろん優勝を目指すけど、どうだろうね」と、皆、明言を避ける。

どうしたことかと、何人かに明言しない理由をたずねたところ、毎年カウナヴァウには魔物が棲んでおり、必ずサプライズがあるからなのだという。ことカーニバルに関しては冗談を挟む余地もなく、みな真剣なのだろうか。

今年のリオデジャネイロのカーニバルがはじまるまで、あと約1週間だ。

(写真・文/柳田あや)
リオのカーニバルはIPCTV(グローボ・インターナショナル)で生中継される。視聴の問い合わせは、080-3510-0676 日本語対応ダイヤルまで