事業リスクますます高まるブラジル

2015年 06月 2日

イタウ強盗

ブラジル経済の悪化、政治の混乱に伴って、日に日にブラジルでの事業リスクが高まっており、進出日本企業は、リスクマネジメントをしっかりと行う必要に迫られている。

ブラジルの経済悪化に伴い、失業者も増加し、治安が徐々に悪くなっている。サンパウロ州保安局は5月25日、1-4月の積荷強盗件数がサンパウロ市で前年比17.7%増の1941件、サンパウロ州が同9.2%増の3133件であったと発表した。

サンパウロ市の積荷強盗件数の36.8%がスーパーや小売店の納品時に起きており、港や飛行場のあるサントスやカンピーナスなどの高速道や倉庫が集中するエリアでは、積荷強盗を専門とする武装化組織による犯行が増えているようだ。

サンパウロ州の輸送業者組合によると14年の同州での積荷強盗被害総額は10億レアル(約400億円)に上る。

ブラジルの輸送会社ブラスプレスは、製品自体に追跡用のチップを組み込んでトラックの搬送ルート変更を即座に突き止めるシステムなど、ハイテク利用の盗難防止策に2年間で5000万レアル(約20億円)を投資している。それにより、輸送費も10%前後上昇している。進出企業は、これらのリスクへの対策を検討するとともに、コストアップに備えた予算計上を早めにしていく必要がありそうだ。

人や一般家庭、商店などへの強盗は前年比で減少傾向にあるようだが、すべての犯罪に占める歩行者を狙った犯罪が急増している。

特に、銃で脅迫して身につけている時計、財布を狙う強盗や、携帯電話、カバンなどのひったくりが多い。企業は今後、さらに治安が悪化するブラジルの状況を鑑みて、駐在員の安全対策にも一層力を入れなければならない。

ブラジル政府の絡む長期の経済プロジェクトでは、リスクマネジメントがなかなか難しいが、駐在員の安全確保や商品、ロジスティクスでのリスク回避など、できるところから早めに取り組んで損失を極力抑えたいところだ。

(文/輿石信男/クォンタム、記事提供/モーニングスター、写真/麻生雅人)
写真は2014年12月31日、サンパウロ市インジアノーポリス、イタウ銀行コトヴィア大通りモエマ支店。支店長が誘拐された後、偽の爆弾で脅迫され推定70万ヘアイス(レアル)が奪われる事件が起きた