ブラジルのレストラン界の第一線で活躍する日本人パティシエ、伊澤彩子さんが来日。トークショーを開催

2015年 06月 9日

伊澤彩子

サンパウロを中心に、ブラジルでガストロノミアのブームが盛り上がってから、はや数年。シーンをけん引するアレックス・アタラがシェフを務めるレストラン「D.O.M.(ドン)」は、「レストランマガジン」が毎年発表する「世界のベストレストラン50」ですっかり常連に。2015年版では9位に選ばれている。

また、「ラテンアメリカのベストレストラン50」(2014年版)では、「D.O.M.(ドン)」は3位、「世界のベストレストラン50」(2015年版)で41位にランキングされた「マニ」は4位にランクイン。さらに、この2軒を含めブラジルからは9軒のレストランがランクインしている。

さらに、2015年はブラジルではじめて「ミシュランガイド」ブラジル版が発売されたが、唯一の二つ星を獲得したのは「D.O.M.(ドン)」で、9軒のレストランが一つ星を獲得した。

そんな、世界でも名高い「D.O.M.(ドン)」でチーフ・パティシエを2年務め、現在、「ミシュランガイド」ブラジル版で一つ星を獲得した「アッチモ」(「ラテンアメリカのベストレストラン50」(2014年版)では38位)で活躍している日本人パティシエがいる。伊澤彩子(いざわ・さいこ)さんだ。

ブラジルの日本文化を紹介するサイト「メイド・イン・ジャパン」が運営するオリエンタルな食文化を紹介する雑誌「Hashi tag」(2014年2月)に掲載されたインタビュー記事によると、伊澤彩子さんがブラジルに渡ったのは15歳の時。両親の仕事の都合で家族と共にブラジルのパラナ州ロンドリーナに移住した。

サンパウロに引っ越した後に結婚。子どものために無添加、無着色のパンやお菓子を作り始めたという。

伊澤さんのパンやお菓子は評判を呼び、駐在員など一時的にブラジルに滞在する日本人家庭の注文を受けて、アンパンやメロンパン、シュークリーム、シフォンケーキなどを作るようになった。キッチンもリフォームして、家庭でのパン作りは15年間続いた。

しかし、パンやお菓子は人気となったが、多忙を極め体をこわしたことをきっかけに、仕事のスタイルを変えてレストランで働く道を選んだという。

日本に一時帰国した伊澤さんは本格的に料理を学ぶためにル・コルドンブルー(本校はパリ)の東京校に入学。その後、改めてパリに留学して同地でコースを修了した。パリのレストランで修業後、ブラジルに帰国。2008年にアレックス・アタラがシェフを務めるレストラン「D.O.M.(ドン)」のチーフパティシエに就任した。

2年間「D.O.M.(ドン)」で働いた後、また他のレストランで修業後、新たにイタリアの家庭料理のレストランを立ち上げようとしていたシェフ、ジェフェルソン・フエダと出会う。

2012年、家族と共に食卓を囲む家庭料理の大切さをモットーとするジェフェルソンと共に、彼の故郷であるイタリアの田舎の家庭料理を提供するレストラン「アッチモ」に旗上げから関わり、現在も同レストランで活躍している。

その伊澤彩子さんが現在、来日、三越伊勢丹ホールディングスが主催するブラジルウィーク「BRASIL FANTÁSTICO! 祝彩楽園 ブラジル」で食文化セミナーを開催している。

6月5日(金)には伊勢丹新宿店で開催された「もっと気軽にブラジル料理とブラジルの食文化セミナー ~ブラジリアンビューティー フルーツ&フィンガーフードレシピ~」に、料理研究家のマリ・ヒラタ氏と共に参加。

6月10日(水)、11日(木)、15日(月)には日本橋三越本店・本館7階「はじまりのカフェ」にて、セミナー「ブラジルフルーツと美と健康」を開催する。

伊勢丹新宿店のセミナーで伊澤さんは「パパイヤクリーム」と「アサイースムージー」のオリジナル・レシピを紹介した。

クレミジママォン

ブラジルではごくごく日常的に親しまれているパパイヤ(ママォン)を使った「パパイヤクリーム(クレミ・ジ・ママォン)」は、とあるシュハスカリーア(シュハスコ専門店)の料理人が偶然作り上げたという逸話があるというデザート・メニューで、星のついているようなレストランでパティシエが作るようなスイーツではないという。

もともとはパパイヤとアイスクリームを混ぜるだけのものだったそうだが、伊澤さんはカシスのクリームやチアシードを加えたレシピを披露。なんとかして、この大衆的なデザートをレストランメニューに取り入れられないか、試行錯誤して作り上げたレシピなのだとか。

この日、レシピを紹介したもうひとつのメニューは「アサイースムージー」。このセミナーのために考案したオリジナルレシピで、絹ごし豆腐やビーツ(ベテハーバ)を使用。日本でもすっかりお馴染みとなった「アサイースムージー」だが、甘さ控えめで、食感も独特な、これまで未体験のスムージー。健康にもよく、日本の食文化も取り入れ、食べた時の楽しさや驚きもある、伊澤さんらしさが詰まった逸品だった。

伊澤彩子さんは、明日6月10日(水)から日本橋三越本店でスタートする「BRASIL FANTÁSTICO! 祝彩楽園 ブラジル」でも、セミナー「ブラジルフルーツと美と健康」を開催する。

6月10日(水)午後3時~4時30分
6月11日(木)午前11時~午後0時30分/午後3時~4時30分
6月15日(月)午後3時~4時30分

10日と15日に紹介されるのは、チーズとグアバの羊羹に似たお菓子ゴイアバーダを合わせたブラジルの定番のおやつ「ロミオとジュリエット」と、豚肉のベリーの部位を使った料理「ポルコ(ポークベリー)」。

11日は、「ロミオとジュリエット」と、「カシュー・セビッチェ」。近年ブラジルでは、ブラジルに負けずレストランブームに沸くペルーのコンテンポラリー料理も人気が高い。そんな中、今サンパウロで人気のトレンディな料理、カシューナッツを使ったセビチェが紹介される。

会場は日本橋三越本店・本館7階「はじまりのカフェ」。予約制 03-3274-8843(直通)、参加費:2,160円。満席の場合はキャンセル待ちとなる。

「ブラジル・ファンタスチコ! 祝祭楽園ブラジル」
日本橋三越本店 本館・新館 各回 6月10日(水)~16日(火)
銀座三越 9Fテラス/テラスコート 7月15日(水)~21日(火)

詳細は日本橋三越本店サイトを参照。15のキーワードでブラジル文化や、ブラジルの「今」を紹介するWEBマガジン「A Boa Vida」もサイト内で公開中。

(写真・文/麻生雅人)