サンパウロ市、イビラプエラ公園に集結した約100名のドラマーが一斉に演奏

2015年 08月 13日

8月9日(日)、サンパウロ市の市民の憩いの場として知られるイビラプエラ公園は、いつも公園で聴くことができる鳥の音に変わり、百数十名のドラマーの ”グルーヴ” が響き渡った。現地メディア「G1」(同日づけ)が報じている。

3歳の少年を含むミュージシャンたちは、ブルーノ・マーズからメガデス、ベロオリゾンチ出身のロックバンド、ジョタ・クエスチからダフト・パンクに至るまで、11曲のセットリストをシンクロするドラムスティックとともに披露したという。

プロジェクト「ドラマー100%ブラジル」の主催によってイベントがスタートしたのは、晴天のもと、12時頃。サウンドチェックでは、ミュージシャンたちは「グルーヴ・トライバル」という2000年から始まった同プロジェクトのオリジナル曲を演奏した。

続けて、ロックのスタンダード・ナンバー、クイーン の「ウィー・ウィル・ロック・ユー」や、ストーンズの「サティスファクション」 、AC/DCの「ユー・シュック・ミー・オール・ナイト・ロング」といったナンバーも演奏した。

実はこのイベントは、もう15年も続けられているそうだ。プロジェクト発足当時の15年前には64名だったドラマーは、今では460名となった。登録者すべてが参加することはできなかったものの、圧巻の演奏風景を観衆が携帯電話で撮影したりと、公園は大賑わいだったという。

ミュージシャンのうち経験豊富な5名は、何百ものドラマーの「指揮者」の役割を果たしているという。そのうちの1人、バンド「ダーノ・イ・フリーキ・フル」のレアンドロ・ノーさん(39)は10回目の参加となる。

「もっともクールなのは、さまざまなミュージシャンたちがごちゃ混ぜで演奏するのを見ることです。プロジェクトに参加するのはこれで10回目ですが、いつもいろんなジャンルの人たちがいます」(レアンドロ・ノーさん)

3歳のペドロ君は、たった1歳でドラムを叩き始めたという。母親でピアニストのレアニ・フォンセカさんによると、ペドロ君はムコ多糖症(MPS)という病を持つという。この難病は運動協調に影響を与えるが、母親は楽器を使うことが彼の病気に効果的だと信じているという。

「ペドロは独特な方法でリズムを取りますが、既にいくつかの難しい曲も演奏し始めました。授業を受けたことはなく、すべて独学です。彼には神経と筋肉が萎縮し運動できなくなっていく退行性の病気がありますが、彼の素晴らしい回復に私たちは気づかされました」(レアニさん)

また、ファビオ・ヒカルド・ルシラさん(40)は、音を楽しむため、息子のジョアン・ヴィトール君を連れてきた。ファビオさんはギタリストで、息子にエレキギターを教えようとしたが、ジョアン君の好みは違ったと話す。

「息子はエレキギターを学ぶことに興味を持ったが、本当に彼に向いてるのはドラムでした」(ファビオさん)

面白いのは、バンドのボーカルが舞台袖にいるということ。マイクを手に取るムヒーロ・リマさん(46)は、自分が袖にいることを気にしないと述べたという。

「今日の主役はドラマーです。ヂーノがプロデュースするこのイベントは本当に素晴らしいです。私たちは参加できて光栄ですし、舞台の奥にいたって嬉しいので、そこに留まっていられますよ。実は、バンドの中心はリズムを打つドラムなんです。ドラムがたくさんいればいるほど、安定するのです」(ムヒーロさん)

このイベント主催者の一人、前出のヂーノ・ヴェルダーヂさん(47)は、すべてのミュージシャンに連絡をとることが作業のほとんどを占めると述べたという。

「すべてのドラマーを呼び、バンドのリハーサルを行い、整理するには多くの時間がかかりますが、親が息子や小さな子供やお年寄りたちと一緒に歌う姿を見ることができるこの仕事は、とてもやりがいがあります」(ヂーノさん)

このイベントには、サンパウロ市長のフェルナンド・アダヂ氏とサンパウロ市文化長官のナビウ・ボンドゥキ氏も出席。観衆と一緒にサウンドを楽しんだという。

「今回は、イベントの開催が2年ごとになることが決まってから初めてのイベントでした。サンパウロの音楽はもっと強くなっていくでしょう」(フェルナンド市長)

ドラムを始めるかという質問に対し、市長は「私はギターも既に手こずっているので、ギターを続けることにします」とコメントしたという。

「ドラマー100%ブラジル」のイベントは、12月にはグアルーリョスで開催される予定。

(文/柳田あや)