米・キューバ国交正常化、ブラジルからみてみると…

2015年 08月 29日

マリエル港

首都ハバナから45キロに位置するマリエル港の改修工事費用9億5700万ドルのうち8億ドルをブラジル国立経済社会開発銀行(BNDES)が融資、大手オデブレヒト社が建設を行った。2014年1月の落成式(一部の完成について)にはルセフ大統領も出席し、追加融資を約束した。キューバにとってはマリエル港の中に経済開発特区を作り外資を誘致する計画であり、ブラジルも対キューバ投資の更なる拡大が期待できる案件といわれている(国内で「イデオロギー的な投資」の批判があることも確かだが)。

ブラジルはキューバにとって中国、ベネズエラに次ぐ第三の貿易相手国であり、2003年から2013年の10年間で貿易額はおよそ7倍に拡大した(9200万ドルから6億2500 万ドルへ)。

ブラジルや中国などがキューバとの関係を強化する中で、米国の、とりわけ産業界が「このまま経済制裁を続けるだけでは、米国は一人取り残される」という危機感を感じていたことは明らかであった。その意味では、ブラジルは今回仲介役ではなかったにせよ、キューバとの経済関係の深化が、間接的に米国にキューバとの関係改善を促すきっかけになったとみることも可能であろう。

2014年12月の「劇的な」発表以来、2015年4月にはパナマで第7 回米州サミットが開かれ、ついにキューバのサミット参加が実現した。ラテンアメリカ諸国は今回のサミットへのキューバの参加を強く望んでいたという。

その背景にはラテンアメリカ・カリブ共同体(CELAC)のようなキューバが参加する(その反対に米国が入らない)地域統合の動きが域内で進んでいることがある(次ページへつづく)。

(文/子安昭子、記事提供/ブラジル特報(日本ブラジル中央協会)、写真/Ismael Francisco/Cubadebate)
写真は2014年1月、キューバのマリエル港