ブラジルで、元ストリートチルドレンだった男性が最高裁判所の弁護士に

2015年 10月 13日

連邦最高裁判所

イズマエウさんが勉強に身を入れ始めたのは、最初の公務員試験を受けようと思ってからのことだ。

「1日12時間勉強しました。朝8時から正午まで、2時間休憩して2時からまた勉強して夕飯を食べ、夜8時から12時までまた勉強しました。行政法、憲法を勉強し始めたころは節とか段落についてもわかりませんでした。8か月勉強して、22歳の時ブラジリア銀行の銀行員試験に合格しました。6か月後、連邦最高裁判所に専門職として声がかかりました」

それからしばらくしてイズマエウさんは検察庁の分析官試験と3つの公務員試験に合格。彼は今、文民警察の二次試験の準備をしているという。

「一度合格すると、次の試験が楽になります。知識が蓄積されていきますから。僕はそれほど頭のいい人間ではありませんが努力型だと思っています。天才が1度で覚えることを10回やる必要がありますが、それでも10回やれば天才と同じことができます。僕はチャンスを有効活用してきた人間です」

そして、自らが手に入れた成功の秘訣について、こう語っている。

「サマンバイアに住んでいた頃の友人は大多数がもう死んでしまいました。あの頃、自分がチャンスを活用するしたたかさを持っていなかったら、と思うと暗い気持ちになります。空港のロッカールームから最高裁判所のデスクはあまりにもかけ離れていて、そのプロセスは今思い出しても涙が出そうです。恩寵、幸運の力は大きいですが、それを機会として利用する勇気がなければ叶わなかったことです」

自分の出自に絶望せず懸命に生きる人とそこに手を差し伸べる人-どちらにも相当の勇気が必要だ。その勇気が出会ったときに生まれる奇跡のまぶしさを、ブラジルはたびたび私たちに教えてくれる。

(文/余田庸子、写真/José Cruz/ABr)
ブラジリアにある連邦最高裁判所