ブラジルのマリーナ・シウヴァ元環境相、日本記者クラブで会見

2015年 10月 20日

マリーナ・シウヴァ

「私が言うように、問題の本質が本当に<文明の危機>であるとするならば、その対処は、ある一国だけの問題でもなく、一部の人たちだけの問題、政治家だけの問題でもありません。これは地球上のあるゆる場所を網羅している問題なので、逃げる場所もありません。また、この危機は前例として参考になるような経験蓄積がない問題なので、対処が難しい問題でもあります」(マリーナ・シウヴァ氏)

地球には、かつて栄華を誇ったが今は滅んでしまった文明が数多くあるが、それらの失われた文明の主と、現在、文明の危機に瀕している我々との間には、大きな違いがあるという。

「過去に滅んだ文明では、自分たちが文明の危機に瀕していることを自覚することができなかったと、ほぼ確信をもって言えます。危機は深刻化して“不可逆的な状況”に自分たちを追い込んでいきました。対して、私たちは危機に瀕していることを自覚できる状況にある点で、優位性を持っているといえます。ゆえに、適切な対応を適切な方法で取っていくくとができる可能性があり、そうする必要があります」(マリーナ・シウヴァ氏)

変わらなければならないのは、工業や農業などの生産方法だけではなく、これからどうあるべきか、理想をどう設けていくかなどを自ら問い、人類としてどういう存在であろうとするか、だという。

「国連によると、経済的な視点から見た持続可能な開発というのは、それぞれの人が持つ富に対するニーズを満たしながら、なおかつ、未来の次の世代も同じように富に対するニーズを満たしていくことを可能にすることで、さまざまな可能性の平等性を産むとしています。社会的な視点、環境の問題においても同様のことがいえますが、文化的な視点においては、すべての地球上の文化を均等化しようとすることは、持続可能なやり方ではないと国連は考えています。そのように働いてしまうと文化そのものの崩壊を招いてしまうので、文化の均等性は求めないあり方を国連は提唱しています」(マリーナ・シウヴァ氏)

そして、これまで囚われていた概念を変革していくことこそが、我々人類が新たな持続可能な開発モデルに変えていくために必要だと説いた。

「これまで、資本主義と社会主義などの2極に分かれていた私たちは、別の在り方、例えば<持続可能主義>に、統合されていく必要があるのではないでしょうか」(マリーナ・シウヴァ氏)

(写真・文/麻生雅人)

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