ブラジル石油公社、レアル安で第3四半期は約1200億円の赤字。反面、純利益が対前年比10%増の企業も

2015年 11月 18日

スザーノ製紙パルプ

こんな厳しい経済状況でも儲かっているのが、ブラジル銀行、イタウ・ウニバンコ、ブラデスコの3大メガバンク。

中でも国営ブラジル銀行は第3四半期において、純利益が対前年比10%増の30.62億レアル(約980億円)となっている。

単純にビジネスが好調で利益が増えたわけではないが、何があってもちゃんと利益を出すのがブラジルのメガバンクである。同じ国営でありながらペトロブラスとは極めて対照的だ。今のペトロブラス総裁は、前のブラジル銀行総裁。約1000億円の利益がある会社から、約1000億円の赤字会社へ転身という、今のブラジルを象徴する人事といえる。

もう1社、好調な企業が紹介されている。

製紙・パルプの世界的大手企業であるスザノ社。生産量も前年同期比で9.9%増え、さらに社会開発銀行(BNDES)からのファイナンスも獲得し、工場拡張に16億レアル(約512億円)を投じると発表した。これを好感し株価は一時6%近く上昇した。

一方、このような好調な企業も含めて、ブラジルの産業界が大きな懸念事項を抱えていることが、この日のサンパウロ州工業連盟(FIESP)の意見広告でわかる。

アメリカ合衆国から始まり日本を含む12カ国の名前を挙げ、先日大筋合意に至ったTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に遅れを取るまいという決意表明とともに、FIESPとして対策の相談と情報提供を開始するとしていた。

誰に向けた広告なのか、やや漠としていたが、そこにはクリントン元米大統領がブラジリアを訪問した際の講演記事があり、「ブラジルの船は沈まない。世界がブラジルを必要としており、近年の成長を喜んでいる。5年後には、なぜあの時あんなにブラジルの未来を心配していたのかと不思議に思うだろう」と希望が持てるコメントが載っていた。

(文/輿石信男(クォンタム)、記事提供/モーニングスター、写真/Roberto Stuckert Filho/PR)
写真は2014年3月20日、スザーノ・パペウ・イ・セルロージ社がマラニョン州インペラトリス市で新装設備プロジェクトをスタート。セレモニーにはジウマ大統領も参列した

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