ファッションの絵本「ファッションぬり絵」日本語版発売

2016年 03月 10日

ブラジル 70年代ファッション

「とりあえず(お年寄りが暇つぶしに色をぬるための)柄や模様があればいいだろう、みたいな感じの本は、量産して高齢者施設に大量に購入してもらおう、というような意図が見えてきます。アーティストが丁寧につくったぬり絵ではなくて、グラフィックソフトを扱える人が適当に柄を配置して終わり。あるいは、ブームで儲けるために、ディズニーなどの人気キャラクターをぬり絵本にしちゃえ、というような本です。これらは芸術作品ではありません。それとは対照的にパウロ・アンドレのぬり絵本は、アーティストがひとつひとつのイラストを丁寧に心を込めて描きあげた芸術作品であるといえます」(黛直子)

表紙こそ、可愛らしいロココ調の装いをした貴婦人のイラストが描かれているが、いったん本を開いてみると、アヴァンギャルド、パンク、ヒッピー、レディ・ガガ風など、多種多様なファッションが飛び出してくる。これらが時系列で紹介されており、色をぬりながら300年にわたるファッションの変遷を楽しむことができるというわけだ。

「よくある “似たようなイラストや模様が延々と続く”単調なぬり絵ではありません。とてもダイナミック(動的)なぬり絵本となっています」(黛直子)

また、書店でみかけるぬり絵本の多くはおとぎ話を題材にしているのに対し、パウロ・アンドレのぬり絵の世界は実際に世界で起こった出来事がベースとなったストーリー(história=歴史)だと黛さんはいう(次ページへつづく)。

(文/加藤元庸、写真/reprodução/instagram/paulandredesign)
写真は著者のInstagramに記載されている着色例