リオ・オリンピック・パラリンピックを 目前にして…懸念と期待(2)

2016年 05月 9日

フェリペ・アンデルソン

ブラジルの五輪における過去最高の成績は、2012年ロンドン大会の金3、銀5、銅9の計17個(国別では 14位)だった。

パラリンピックにおける過去最高の成績は、やはり前大会の金21、銀14、銅8の計43個(国別では7位)。COBは、今回の五輪でメダル27個以上の10位以内、パラリンピックでメダル85個以上の5位以内を目標に掲げている。

ブラジルと言えばサッカー、というイメージが強いが、近年、ブラジルサッカーはやや低迷している。しかし、自国開催とあって、男女とも史上初の金メダル獲得を目指す。

男子は、オーバーエージ枠にネイマール(バルセロナ)らA代表の主力を起用する予定で、23歳以下の選手でもフェリペ・アンデルソン(ラツィオ)ら欧州でプレーする逸材がいる。ただし守備と連携には不安がある。

女子は、2006年から2010年まで5年連続で世界最優秀選手に選ばれたFWマルタらが中心となる。2014年
4月に経験豊かなヴァドンが監督に就任し、以後、国内クラブに所属する選手はブラジルサッカー連盟に所属して常時、代表チームとして活動する。ただ、主力が固定されて高齢化が進んでおり、中堅、若手の台頭が必要だ。

ブラジル人にとってのこの大会最大のヒーロー(この場合はヒロイン)候補が、地元出身の女子柔道57 kg級のラファエラ・シルヴァ(ハファエラ・シウヴァ)。麻薬組織同士の抗争を描いた映画「シティ・オブ・ゴッド」の舞台となったファヴェーラ(貧民街)出身で、幼い頃は誰とでも喧嘩していた。手を焼いた両親が7歳のときに柔道教室へ通わせたところ、抜群の身体能力と闘争心で頭角を現わす。

2011年、19歳のときに世界選手権で準優勝してロンドン五輪優勝が期待されたが、2回戦でまさかの反則負け。「柔道をやめたい」と漏らすほど落ち込んだが、周囲の励ましで立ち直り、2013年の世界選手権で優勝。“ 野獣 ”と呼ばれる松本薫と同じ階級で、二人が対戦すれば、リオ五輪屈指の名勝負となるかもしれない。

柔道の代表選手が決まるのは5月末だが、シルヴァ以外にも女子ではロンドン五輪で金メダルを獲得した 48kg級のサラ・メネゼス、78kg 級で銅メダルを手にしたマイラ・アギアールらに優勝候補が目白押し。男子では、ロンドンで銅メダルを獲得した 60kg 級の日系選手フィリッペ・キタダイ、やはり日系の 66kg シャルレス・チバラらに期待がかかる(第三回につづく)。

ブラジル特報 2016年5月

※「ブラジル特報」は日本ブラジル中央協会が発行している機関紙。隔月発行、年6回、会員に無料配布される。日本ブラジル中央協会への問い合わせは、E-mail info@nipo-brasil.org、TEL:03-3504-3866、FAX:03-3597-8008 まで。

(文/沢田啓明、記事提供/ブラジル特報(日本ブラジル中央協会)、写真/Rafael Ribeiro/CBF)
写真は2015年4月6日、テレゾーポリス。コパ・アメリカ2015の会見に出席したフェリペ・アンデルソン