ネイマールとほぼ同じ報酬を手にした、超人ハルクと呼ばれる選手

2016年 07月 8日

フッキ

7月1日づけのブラジル現地メディア「フォーリャ・ヂ・サンパウロ」紙において、中国のサッカーチームShangai SIPGが、ブラジル人選手のHULK(29)と移籍契約を締結したことが報道されました。

米マーベル・コミックの「インクレディブル・ハルク(超人ハルク)」の怪人、ハルクに似ていることから、「ハルク(HULK)」の名前でプレーするブラジル選手。ハルク(HULK)は、ブラジルでは「フッキ」と発音されており、日本でも「フッキ」で知られています。

フッキ(本名:Givanildo Vieira de Sousa)は2014年のブラジルW杯でブラジル代表を務め、レギュラー選手として活躍しましたが、2014年のW杯でブラジルがドイツに大敗を喫した後、監督がドゥンガに代わってからは、ピッチに顔を見せる機会も減ってしまいました。

フッキは、18歳の時にブラジルを出て3年ほどJリーグ(川崎フロンターレ、東京ヴェルディ)でプレーしています。その後、ポルトガル、ロシアのチームを経て、今回の中国のチームへの移籍に至っています。

ところで、Shangai SIPGが、フッキを移籍させるのに支払った金額は55百万ユーロ(約62億円)と言われています。これはアレックス・テイシェイラの中国チームへの移籍金50百万ユーロよりも高く、アジアのサッカー業界において最も高い移籍金となったようです。

フッキの強みは、左足によるシュートと強靭な体力で、彼はヨーロッパ・リーグでも活躍しました。しかし、ブラジルの「フォーリャ」紙はフッキは決して「クラッキ(craque)=名選手」ではないという厳しい評価を下しています。

機敏さに欠けるし、右足が弱く、ヘディングもイマイチ、パスミスも多く、ファールが多いのでイエロー・カードも沢山出されていると酷評しています。

しかし中国のShangai SIPGにとっては、それらのマイナス情報はあまり重要ではないようです。彼らにとって重要なのは、ブラジル代表を務めるフッキが彼らのチームでプレーしているという事実そのものなのでしょう。

ESPNが公表した情報によると、フッキの報酬は月額で3.7百万レアル(約1.1億円)です。この数値は業績に応じた上乗せ金は含まれていません。もし、この金額が本当だとしたら、ブラジルで唯一スーパースターと言えるネイマールの報酬と肩を並べることになります。「フォーブス」誌によると、ネイマールのバルセロナでの報酬は月額で3.87百万レアル(約1.2億円)です。ネイマールの場合は広告塔(garoto-propaganda)としての収入がプレー報酬のおよそ50%あるので、フッキとの差は広告収入の分だけということになります。

中国のチームがあまりにも高い移籍金、報酬を出したことを指して、「フォーリャ」紙は次のように評しています。

「Hulk é mesmo incrível.(フッキ(ハルク)は、(名前の通り)本当にインクレディブル(信じられない漢)であった)」。

(文/唐木真吾、写真/Rafael Ribeiro/CBF)
写真は2016年3月19日、パラグアイで行われたワールドカップロシア大会南米予選のブラジル対パラグアイ戦に出場したフッキ

著者紹介

唐木真吾 Shingo Karaki

唐木真吾 Shingo Karaki
1982年長野県生まれ。東京在住。2005年に早稲田大学商学部を卒業後、監査法人に就職。2012年に食品会社に転職し、ブラジルに5年8カ月間駐在。2018年2月に日本へ帰国。ブログ「ブラジル余話(http://tabatashingo.com/top/)」では、日本人の少ないブラジル北東部のさらに内陸部(ペルナンブーコ州ペトロリーナ)から見たブラジルを紹介している。
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