リオ五輪 大会1日目柔道女子48キロ級、男子60キロ級 柔道初日男女ともに最後まであきらめず銅メダルを獲得!

2016年 08月 8日

サラ・メネーゼス

2016年リオデジャネイロ。オリンピック。開会式を終え、翌日から競技ラッシュが始まった。

オリンピックの競技が行われる順番は毎回だいたい同じようだ。花形競技では、水泳、柔道は早くに始まり、陸上は後半に行われる。

筆者の場合サッカー以外の競技を真剣に見るのは、ほぼ4年に一度、オリンピックのときだけ、と言っても過言ではない。

柔道についても、ほとんどそんな感じなのだが、一度、柔道の世界選手権を見に行ったことがある。それが、2007年のリオデジャネイロ大会だった。

当時、サンパウロに住んでおり、リオまで長距離バスで往復したことを思い出す。筆者が見たのは大会最終日で、女子の最軽量級と男子の最重量級の日だった。

男女ともに、軽量級から始まり重量の順に進んでいくのが一般的だと思うが、このときの大会はなぜか、このような組み合わせだった。

初めての柔道生観戦はなかなかおもしろかった。

結局、女子では谷亮子、男子では棟田康幸が優勝し、君が代を2回聞くことができ、すばらしい感動を味わった。観客席には前日までに既に試合を終えた、谷本歩実、佐藤愛子、西田優香といった代表選手たちがいて、話をしたりしたことを思い出す。特に谷本歩実の目力、そしてやさしさあふれる表情に、アスリートの美しさを感じさせられた。

そんな思い出もあり、サッカーだけでなく柔道も好きな競技の一つなのだが、柔道を見ていつも思うことが、本当に<紙一重の競技>であるということだ。

筆者は柔道に精通しているわけではないので、技の掛け方、トレンドなど知らない部分も多い。そのため、競技を見ていても審判がどのような判定をするのかわからないせいもあるだろうが、一般人の感覚からすると、技がどちらに決まるか、また待ての取るタイミングなど、審判の度量に負う部分が非常に大きいように感じられる。

そのため、どんなに有力な選手でも、ある程度は実力が反映されるだろうが、1回戦で負ける可能性も十分にあると思うし、優勝できることもあると思わされる。

また、警告(指導)の数だけで勝敗が決まることもある。これはサッカーに例えると、ゴールが決まっていなくてもイエローカードの枚数だけで勝敗が決まるようなもので、けっこう違和感を感じてしまう。

さて、そんな柔道の初日、6日(土)に男女の最軽量級が行われた。

女子48キロ級は、近藤亜美。五輪2連覇の上野雅恵がコーチを務める三井住友海上所属の21歳。まだまだ、これからの選手だ。

近藤は2回戦から出場。2回戦は見ていないが、その次の準々決勝は、リードを奪われるものの最後の最後に寝技で逆転し、準決勝進出を決めた。しかし、準決勝では、早々に相手に技ありを決められ、時間は十分に残されていたが、結局追いつくことはできず、決勝進出は絶たれた。

続く3位決定戦も厳しく、最後までポイントも反則も両者一切なく、延長戦に入るかと思われた残り1秒でポイントが入り、辛くも銅メダルの獲得を決めたのだった。銅メダルを決めてくれて本当によかったと思ったが、金メダルだけを目指していた近藤は、本当にくやしそうだった。

一方の男子の高藤直寿についてだが、23歳と若い次世代を担う逸材のようだ。

高藤も2回戦から出場し、その2回戦は見ていないが、続く3回戦は開始16秒で鮮やかな1本勝ち。しかし、続く準々決勝では、積極的に攻め続けたのもかかわらず、技と認定されず、そんな中一瞬の隙をつかれ、相手に1本を取られてしまった。

これも、どちらにポイントが入ったのかわからないような微妙な感じだった。

柔道には返し技というのがあり、こちらが技をかけても返し技というように判定されたら相手にポイントが入ったりするし、いつ警告を取られるかわからない。見ている私のほうがよくわからないので、緊張しながら見ることになる。まったく負けた感じはしなかったのだが、負けたようだ。本当に紙一重というか、判定はきわめて微妙な感じを受ける。本当に、この競技の微妙さをまざまざと感じさせられた。

これは近藤亜美にとっても同じことだが、金メダルだけを目指してきたので、金メダルの夢を絶たれた後の戦いは本当に難しいと思う。気持ちをどれだけ切り替えられるか。

準々決勝で敗れた高藤は、敗者復活戦で戦うことになった。

本当にメンタル的に厳しいものだったと思うが、終始先に仕掛け優勢に試合を進めた高藤は韓国人選手を相手にポイントの差で勝つことができた。

そして、3位決定戦だ。

敗者復活戦と同様に、高藤が常に先に仕掛けており、優勢に試合を進めた。そんな中、相手に消極的ということで2つ指導が入る。高藤は技を仕掛けるが、なかなかポイントにはならない。

柔道は、返し技などもあり、いつどうなるかわからないので、まったく安心できないのだが、最後まで落ち着いた動きで、何とか銅メダルを獲得することができたのだった。

結局、柔道初日の日本代表は男女ともに銅メダルを獲得した。

柔道という競技は日本人にとってはとても残酷で、金メダルでないと、という風潮があるように思われる。しかし、きちんと試合を見ていれば、銅メダルだからといって、誰も責める人はいないだろう。これだけあやうい、本当に紙一重の戦いを強いられる競技で、メダルを獲得できたのだから、本当に立派だと思う。

選手は本当にくやしいだろう。しかし、ホッとした部分もあると思う。当然金メダルを目指してきているのだろうが、メダルを取れるのと取れないのとでは大きく異なる。銅メダルでも、本当に胸を張ってほしいと思う。

これから、連日柔道の戦いが続く。どのような戦いがみられるのか、注目していきたいと思う。

(文/コウトク、写真/Roberto Castro/Brasil2016)
写真:女子48㎏ではブラジルのサラ・メネーゼスも準々決勝まで進んだ

著者紹介

コウトク

2005年6月~2012年6月まで仕事の関係で、ブラジルに在住。ブラジル在住当時は、サッカー観戦に興じる。サントス戦については、生観戦、TV観戦問わずほぼ全試合を見ていた。
2007年5月のサンパウロ選手権と2010年8月のブラジル杯のサントス優勝の瞬間をスタジアムで体感。また、2011年6月のリベルタドーレス杯制覇時は、スタジアム近くのBarで、大勢のサンチスタと共にTV観戦し、優勝の喜びを味わった。

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