リオ・パラリンピックのウィルチェアーラグビーを振り返って

2016年 09月 30日

9月18日(日)、日本時間の午後9時から、ウィルチェアーラグビーの3位決定戦が行われた。

ウィルチェアーラグビーとは、その名のとおり車いすで行うラグビーのことである。ただし、ラグビーそのものとはだいぶルールは異なる。

車いすで行う球技といえば、真っ先に思い浮かぶのは、車いすバスケットボールだろう。

しかし、最も激しいボディコンタクト競技となると、車いす同士でのタックルが認められているこのウィルチェアーラグビーなのである。この競技の試合は、今大会まで観戦したことはなかったが、激しいボディコンタクトが認められているということで、とても注目していた。

頸髄損傷や機能障害など四肢に障害のある選手たちが、専用の車いすに乗って競技を行う。各8分間の4つのピリオドを4人の選手で戦い、選手は障害に応じて点数(0.5~3.5点)が与えられ、プレーする4人の選手の持ち点の合計が8点を超えてはならないというルールがある。使用するボールはラグビーのような楕円型ではなく丸い形で、バレーボールを参考に開発されている。

いろいろとルールはあるが、ちょっと見ればすぐに理解できる。ラグビーというが、前方にパスを出すこともできるし、球と関係ないところで相手選手を邪魔することなどもできるので、どちらかというとアメリカンフットボールに近い感じがする。いずれにせよ、見ごたえは十分だ。

この競技は、ボール保持時のオフェンスのチームが圧倒的に有利で、ほぼ確実に点数を入れることになり、点数が入ると、相手チームにボール保持が移る。そのため、ボール保持時には確実に点数を入れ、そして、チャンスを見て、ボール保持の相手からボールを奪うことが必要になる。

日本は、これをほぼ確実に行っていた。そのため、大差にはならなかったが、着実にリードを保ちながら、試合を進めることができた。

あとは、各ピリオドごとに点数が確定するので、ピリオドの最後に点数を入れることが重要になってくる。そのために時間稼ぎなどもするのだが、これはカナダのほうが上手だった。

しかし、最後まで日本は集中力を切らさず、52-50で勝利し、見事、銅メダル獲得を決めたのだった。

この日に先がけて行われた予選リーグの日本対アメリカ戦では、延長戦の末惜しくも僅差で敗れたものの、強豪アメリカを相手に善戦した日本は、かなり強いと感じていた。しかし実際にメダルを獲ったことに、選手たちも感無量だったようだ。勝利が決まった瞬間、ボールを持っていたエースの池崎はボールを高く投げて喜びを表し、その直後にキャプテンの池と抱き合って喜んでいた。このチームを牽引していた2人の喜び、そしてメダル獲得の安堵感は相当なものだっただろう。特に、前ロンドン大会では、3位決定戦で破れメダルを逃していただけに、今回の銅メダル獲得という結果には、喜びもひとしおだったと思う。

こんな光景を見て、個人競技もいいが、やはりチーム競技は格別だと改めて思わされた。

パラリンピックの楽しみには、今まで試合を見たことがなかった競技、日ごろほとんど目にするようなことがない競技を見れることでもあると思う。この競技についても、十分に堪能させてもらった。

次の東京大会、日本チームはどのような顔ぶれで、どのような戦いをするのか、とても楽しみに思う。

(文/コウトク)

著者紹介

コウトク

2005年6月~2012年6月まで仕事の関係で、ブラジルに在住。ブラジル在住当時は、サッカー観戦に興じる。サントス戦については、生観戦、TV観戦問わずほぼ全試合を見ていた。
2007年5月のサンパウロ選手権と2010年8月のブラジル杯のサントス優勝の瞬間をスタジアムで体感。また、2011年6月のリベルタドーレス杯制覇時は、スタジアム近くのBarで、大勢のサンチスタと共にTV観戦し、優勝の喜びを味わった。

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