ブラジルで68歳の起業家が仮想通貨流通アプリを開発・商品化

2017年 07月 12日

仮想通貨 ブラジル

まず、商品・サービスに対するエコでの支払いはあくまで支払総額の一部であること、また、エコに有効期限(2017年7月現在、付与から90日間)があり無限には増えないことがサービス存立の基盤となっているという。

現在のところ、サービス提供範囲はサンパウロ市モエマ地区に限られているが、ある加盟レストランではエコ導入後に来客数が30%増加した店もあるという。エコで払う分は顧客にとっては実質割引となる。加盟店の店長は、エコの導入で客単価がかなり上がったという。消費が確実に増えている実感があるようだ。

仮想通貨というよりは地域限定電子クーポンに近いペルミニオさんの「エコ」だが、この事業を始めた動機として、次のように語っている。

「消費を増やす、ということが今我々の社会で求められていることなのです。景気を上向かせるためにはまず消費が増えなければなりません」(ペルミニオさん)

現在モエマ地区でエコ決済ネットワークに加盟している店舗は50店。ペルミニオさんがこの事業から得る収入について詳細は語らなかったが、加盟店の売上に連動したフィー収入を得ているとのことだ。消費者がエコ決済アプリを使って支払った際に店舗側の売上がわかるため、フィー計算が可能だという。

若い起業家の牙城、というイメージの強いアプリ開発の世界に乗り込んだことについて、ペルミニオさん自身は違和感を感じたことはないという。

「私は自分が年老いていると感じたことは一度もありません。いつも新しいことにオープンであればいくつになってもどんなことでも可能です」(ペルミニオさん)

ペルミニオさんのような成功者がいる一方で、ブラジル社会における起業の状況は厳しい。起業コンサルティング会社トラストヴォックスのタチアナ・ペゾーラさんによると、ブラジルにおいてスタートアップ期の企業のうち25%は一年以内に事業から撤退しているという。

タチアナさんによると、失敗の原因は調査不足で、特に起業前のマーケット調査が圧倒的に足りないためだという。自分の商品・サービスを市場に出してどのくらいの売上が見込めるのか徹底的にシミュレーションをして、自分で自信が持てる段階に至る前に起業しているケースが多いとのことだ。

起業までの具体的なプロセスとしては、たとえ時間がなくても少なくとも自分が売ろうとしているモノ・サービスを消費している人と話し、同業者となりそうな人と話すべきだという。また、「すでにこのサービスを始めている競合はいないか?」「もっといいアイデアを持っている人はいないか?」と常に自分に問いかけることも重要だという。

世界有数の起業家人口を誇るブラジルには「一国一城の主」に対する強い憧れ、起業家に対する社会的評価の高さが背景にあると思われる。年齢を障害としない成功例、やりたいと思った時が起業時という失敗例、いずれにもその社会的背景を感じる。チャレンジ精神十分なブラジル、起業・事業ノウハウをシェアできる社会的基盤が整えば、経済が成長軌道に戻る日は遠くないかもしれない。

(文/原田 侑、写真/Reprodução/「Pequenas Empresas & Grandes Negócios」/TV Globo)
写真はTVグローボ「ペケーナス・エンプレーザス・イ・グランヂス・ネゴーシオス」より。TVグローボ系列の番組はIPCTV(グローボ・インターナショナル)で放送中。視聴の問い合わせは、080-3510-0676 日本語対応ダイヤルまで

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