汚職摘発がM&Aを呼ぶ!? ラヴァ・ジャット作戦開始から3年間で、関連企業のM&Aは約36兆円規模に

2017年 10月 17日

ラヴァジャット デモ

<ペトロブラス>

2017年はまだ成約に至った案件はないものの、2017-2018年で210億USドル(約2兆3500億円)の成約を目指している。中には2-3か月中に署名プロセスに入るものも含まれる。残りは2018年中の成約を目指す。

売却対象会社リストの中には油田、肥料製造、アフリカでの事業、アメリカ合衆国パサデーナの精製事業、そして、BRディストリブイドーラの株式公開が含まれている。

2017年3月、連邦歳入庁はペトロブラスの株式売買計画を承認したが、その際にペトロブラス側で売却計画を全面的に見直している。

ペトロキミカ・スアッピやリキガスの売却など、法務省だけでなく、経済防衛行政審議会(CADE)からも疑義をはさまれており、売却の承認を得るまでには越えなければならない山がいくつもある。

<オデブレヒト>

オデブレヒトグループでは現段階では傘下の11社を売却する予定だが、個別の売却額は公表していない。すでに売却が決まっているオデブレヒト・トランスポルチを除く傘下企業の売却により120億レアル(約7350億円)の資金を回収する計画で、うち70億レアル(約2450億円)は確実だという。

傘下のダイヤモンド鉱山(CATOCA)、アンゴラの石油採掘事業、ホンドニア州サント・アントニオの水力発電所については交渉中とのことだ。これら資産の評価額は総額160億レアル(約5600億円)で、売却により回収した資金でオデブレヒトグループの流動負債は90億レアル(約3150億円)近く圧縮できると見ている。

<カマルゴ・コヘア>
同社は常に新たな機会をうかがっているとコメントしている。9月にニューヨークとアルゼンチンの証券取引所にグループ傘下のセメント会社、ロマ・ネグラを新規上場させる予定だと発表した。しかしながら、今のところロマ・ネグラ以外のグループ内企業の株式を売却する予定はないという。

<BTGパクトゥアウ>
同社は資金繰りのためいくつか処分する予定の資産があることは明かしたものの、詳細についてはコメントしなかった。2015年に収監されたアンドレ・エステヴィス氏はこの銀行の元社長であり、最近共同経営者の座についたばかりだが、銀行は昨年、組織再編を一通り終えたとコメントした。9月、ペトロブラスの元役員ネストール・セルヴェロー氏に口止め料を払ったとされる嫌疑について、連邦公共省はエステヴィス氏の赦免を申請した。

<アンドラーヂ・グチエヒス>
傘下企業の携帯電話キャリア、オイの株式をペルーのサネパール・イ・バジョヴァールに売却したと伝えている。しかしながら売却価格については回答しなかった。また、オイ以外の株式の処分は今のところ予定していないとのことだ。

<J&F>
G1の取材に対してJ&Fグループは傘下企業の株式の売却についてコメントしなかった。傘下のJBSは、6月、子会社関係会社からの60億レアル(約2100億円)の投資引き揚げを発表した。

<その他>
ブラスケンは子会社売却の予定はないとコメントしたが、親会社側では売却候補に入っている。

ペトロブラスはオデブレヒトとの提携の手じまいを検討していると発表した。

OASとケイロス・ガウヴァォンはG1の調査に応じなかった。

ラヴァ・ジャット作戦で明るみに出た情報・証拠が見せるブラジル社会の「膿」には、正直、絶望を覚える。同時に、魑魅魍魎が渦巻く政界・財界にメスを入れる裁判所、若手政治家、警察官など、社会の膿を出し切ろうとする人々の強さはかつてないほどの希望を与える。M&A案件や株式市場の推移を見る限り、一部投資マネーは希望のシナリオを前提にブラジルの未来を物色し始めているようだ。

(文/原田 侑、写真/Marcello Casal/Agência Brasil)
写真はブラジリアでラヴァ・ジャット作戦の捜査を支持して、汚職撲滅を訴える国民