ブラジルで、社会起業家向けファンド設立される

2018年 01月 3日

Fernando Simoes Filho

テメル政権下で大転換期を迎えているブラジルのビジネス界。その方向性を暗示しているのがブラジルに対する内外の投資資金の動向だ。

世界的大富豪で投資家のレマン氏や中国投資ファンドなど、国内外の資金が本格的にブラジルへの投資に向かいつつある。投資対象はIT、インフラ、資源開発など範囲が広がっている。

目まぐるしく動き始めたブラジルの投資業界で、一味違うファンドの設立が注目を浴びている。

グローボ系ニュースサイト「G1」が2017年12月30日づけで伝えたところによると、ブラジル証券取引所にも上場している物流大手企業「JSL」の経営陣の一人、フェルナンド・シモィンス・フィーリョ氏が社会起業家向けファンドを設立するという。

フェルナンド氏はJSLの創業者ジュリオ・シモィンス氏の孫にあたる。

フェルナンド氏は2018年第1四半期中に1500万レアル(約5億1400万円)のファンドを設立し、社会起業家向けに低金利融資を開始すると発表した。利益は分配せず、再投資に回すとのことだ。

社会起業家支援の取り組みはフェルナンド氏にとってこれが初めてではない。

同氏はすでに、同じ志を持つ共同経営者、ヒカルド・マストロッティ氏、エドゥアルド・ペドッチ氏ともに、ベンチヴィという、社会起業家を金銭的に支援する法人を設立している。

ベンチヴィでは投資家から集めた資金の半分を財務省債などの低リスク資産に、残り半分を社会貢献ビジネスに拠出している。

同社は24人の投資家から集めた資金200万レアル(約6800万円)を管理しているが、すでに2社に資金を提供している。

投資スキーム概要は下記の通り。投資家はベンチヴィと投資契約を結んだら、4年間で最低2万5000レアル(約86万円)拠出をすることになり、4年が過ぎたら持分の返金を受ける。ただし返金額にはインフレ等に伴う購買力調整額は含まれない。

「ベンチヴィの投資家には、投資持分は金銭的利益に対する権利ではなく、社会的活動へ参加する権利、という点についてご理解をいただいています」(フェルナンド・シモィンス・フィーリョ氏)
目標達成率は月次でモニターされ、金利は1か月ごとの変動、利払い日は3か月に1回、というのが基本的な契約とのことだ。

支援の形態が返済不要の資本金拠出ではなく、いずれ返済しなければならない貸付という点にはかなり世知辛さを感じる。しかしながら現在のブラジル富裕層が考えるサスティナブルな投資、投資リスク許容度をよく表している。

長らく金利で暮らしてきたブラジルの超富裕層にとって、元本割れする投資はそもそも選択肢にない。逆に元本の保全のみを条件とするベンチヴィのような支援形態は、創業者一族のような富裕層でなければ思いつかなかったスキームなのかもしれない。

(文/原田 侑、写真/Divulgação)
ベンチヴィの共同経営者もつとめるフェルナンド・シモィンス・フィーリョ氏