【コラム】鉄の宝庫ブラジルとの絆~新日鐵住金の歩み

2018年 12月 18日

usiminas

<鉄の宝庫ブラジルとの絆>

2012年10月に新日本製鐵と住友金属工業の統合により発足した新日鐵住金は、製鉄事業を中心にエンジニアリング、化学、新素材、システムソリューションなどの事業を日本国内外で展開している。

当社とブラジルとの関係は、1955年のヴァーレ社鉄鉱石の日本向け初出荷に遡る。以来、1958年のウジミナス社への出資・建設、2007年のバローレック&スミトモ・トゥーボス・ド・ブラジル(VSB)社の設立を経て、現在ではエンジニアを中心に当社からのブラジル派遣者は60 名を越える規模となっている。

<ブラジル事務所開設>

旧新日本製鐵がリオ・デ・ジャネイロ市にブラジル法人を開設した1972年は所謂ブラジルの奇跡によりブラジルの経済、工業生産が目覚ましく成長した時代であった。

その様な時代背景の中で、
①鉄鋼業の拡大がブラジルの国家プロジェクトとして計画されていた中でのエンジニアリング受注機会の模索(日本からの鉄鋼関連技術・プラント輸出、機械プラントの現地生産など)、
②日本の高度経済成長期を支える鉄鉱石資源の供給元の多角化の観点からのブラジルの良質な鉄鉱石資源の開発(鉄道、港湾などの輸送インフラを含む)、
③ウジミナス社の経営サポート、
④ブラジル鉄鋼業の鋼材輸出競争力の調査などが開設目的として挙げられてい
る。

<鉄鉱石資源開発>

ブラジルの鉄鉱石資源の開発は、ヴァーレ社と、当社を中心とした日本鉄鋼業との協力関係に支えられて発展してきたと言っても過言ではない。

日本向け出荷を前提とした大型船の受入れが可能なエスピリット・サント州ヴィトーリア市ツバロン港の新設(1966年)、日本の全高炉メーカーとヴァーレ社との鉄鉱石ペレットJVであるニブラスコ社の設立(1974 年)、世界最大かつ最良質のパラー州カラジャス鉄鉱山の開発(1985 年出荷開始)など、何れのプロジェクトもブラジル人と日本人、サプライヤーとユーザーという立場の違いと幾多の困難を乗り越えて、多くの関係者のご協力の下、未開の地において鉄鉱石資源の開発を実現し、今日に至っている。

<ウジミナス社における挑戦>

ウジミナス社と当社の歴史は、鉄鉱石資源が豊富なミナス・ジェライス州に一貫製鉄所を建設するという計画への協力を日本政府がブラジル政府から要請されたことに始まる。

1957年6月3日に日伯両政府の間で「日伯合弁製鉄会社設立に関する協定(堀越・ラナリー協定)」が締結されているが、この2017年には60 周年を迎え、ベロホリゾンテやイパチンガで盛大な祝典が開催された。

1958 年にウジミナス社が設立されて以降、当時は無人の荒野であったイパチンガに当社の前身である八幡製鐵が中心となって最初の数年間だけでも600人以上の技術者を送り込み、困難を極めた製鉄所の建設、操業支援などに注力してきた。

その後60 年に及ぶ技術協力、高級鋼製造に必要な最先端技術のライセンス供与などを通じ、当社の有する経営資源を惜しみなくウジミナス社に投入した結果、今日、ウジミナス社はラテンアメリカ有数の高い技術力を誇る製鉄会社に成長。ここ数年のブラジル経済の低迷に伴い厳しい収益状況にあったウジミナス社だが、2017 年に入り明るい兆しが見え始めてきている。

今後とも同社の利益を最優先に考えて、引き続き貢献していく所存である。

<VSB社における挑戦>

2016年にフランスのバローレック社のブラジルでの鋼管製造事業と前述のVSB社の事業統合を行い、新生VSB(バローレック・ソルソィンス・トゥーブラレス・ド・ブラジル)社が誕生した。現在は石油開発・生産の現場で使われる油井管の市況低迷により継目無し鋼管の販売で苦戦を余儀なくされているが、コスト競争力の強化等に注力し、収益改善に邁進している。

<ブラジルとの絆の更なる強化>

変化の激しい事業環境をしっかり見据え、日伯両国にどういう貢献ができるのかを自らに問いかけながら、将来に向けた事業基盤の強化を着実に推進していくことが、現在のブラジル派遣者60 名の責務であると考えている。鉄鋼業を中核事業とする当社にとって、良質な鉄鉱石の一大産出国であるブラジルの重要性はいささかも揺らぐものではない。輝ける碧き空の下で、その絆を更に強固なものにしていきたい。

ブラジル特報

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(文・写真提供/能勢大伸、記事提供/「ブラジル特報」)
写真は1962年、ウジミナス社イパチンガ製鉄所第一高炉火入れ式