デング熱の画期的ワクチンをサノフィパスツール南米支部が開発。遺伝子組み換え「蚊」に続きブラジルでデング熱への対策進む

2014年 09月 5日

デング熱の蚊

4月にはサンパウロで今年初のデング熱による死者を出しているブラジルでは、デング(デンギ)熱対策は社会問題になっており、これまでにもさまざまな対策が講じられてきた。

画期的なプロジェクトのひとつとしては、デング熱を媒介する蚊を減らすための遺伝子組み換え「蚊」の量産にも成功している。このプロジェクトは7月に、サンパウロ州カンピーナス市で始動している。

サノフィ・アベンティスグループのワクチン専門事業部門サノフィパスツール南米支部は、2万1000人の小児に対して行われた新たなテストによって、デング熱ワクチンは60.8%の有効性があったことを発表した。ブラジルのメディア(「G1」9月3日づけ)が伝えた。

同社は2015年初旬にブラジル国家衛生監督局(ANVISA)に同製品を提出して審査を求める予定だという。

サノフィパスツール研究所は、同社が開発したデング熱向けの新型ワクチンは、南米及びカリブ地域の小児児童や青少年たち約2万1000人に対する実験の結果、60.8%が症例に対して有効だったとしている。

この実験のより詳細な報告は、11月に合衆国で行われるアメリカ熱帯医学衛生協会(ASTMH)の年次総会で公表されるとのこと。サノフィパスツールの医学部門マネージャー、シェイラ・オンサーニ氏によると、半年以内に科学雑誌にも発表されるという。

シェイラ氏によると同社は、ANVISAに提出する書類に必要な臨床実験は最終段階を完了したという。

実験は2011年6月~2013年4月に、ブラジル、メキシコ、ホンジュラス、コロンビア、プエルトリコの9~16歳の児童、青少年に対して行われた。ブラジルにおいては3550名の実験参加者が、6か月間の間隔を置いて3回に渡ってワクチンを接種した。そして。ナタウ、フォルタレーザ、カンポグランヂ、ゴイアニア、ヴィトーリアという、デング熱発祥者の割合が高い5都市で実験は行われた。

約2万1000人の治験者のうち、2/3はワクチン、1/3は治験用ダミー薬を与えられたとのこと。同社によると、ワクチンを接種した治験者グループは、ダミー薬を投与されたグループよりも、60.8%発症数が少なかったという。

ただし、実験中にデング熱に感染した人数の合計数は開示されていないとのこと。

また、ワクチンは血清型ごとに、タイプ1に対しては50%、タイプ2に対しては42%、タイプ3に対しては74%、タイプ4に対しては77.7%と、異なる効力のレベルを持っているという。

「たとえ防御が異なるレベルだったとしても、4つの異なる血清型すべてに効力のあるワクチンでなければなりません。それぞれが全てに役立ちました。今日、デング熱に対して、具体的な治療法も予防法もありません。ワクチンが10人中6人に効くのなら十分役立つでしょう」(シェイラ・オンサーニ氏)

医師によるとワクチンは、デング熱による入院を80.3%減少させることができたという。安全性に関しては「死亡例はなかった」「良好な反応」だと彼女はこたえているという。

現在、イニシチアヴを取るデング熱のワクチン開発は国家的機関を含め世界中にいくつかある。その中には、オズヴァウド・クルス財団、新型インフルエンザA型ワクチンの製造・供給でもサノフィパスツールと提携関係を結んでいたブタンタン研究所なども含まれる。しかし、どのプロジェクトもテスト段階でフェーズ3を克服していないという。

また、同じワクチンをアジアで検証した結果では1万275人の児童でテストが行われ、その結果は7月に科学雑誌「ザ・ランセット」に発表されたという。テストは、感染に対して56.5%の効力を発揮したことを示している。

血清型タイプ別では、タイプ3と4に対しては75%、タイプ1に対しては50%、タイプ2に対しては35%だった。そしてこの研究では同ワクチンが、最も事態が深刻となるデング出血熱の症例の88.5%を防ぐことができることを示したという。

(文/麻生雅人、写真/Arquivo/Agência Brasil)