ロストバゲージならぬロストチャイルド!?子どもが行先の違う飛行機に…
2016年 12月 4日12月、ブラジルはこれから本格的に夏を迎えるが、他のキリスト教国と同様、ホリデーシーズンに突入する。13か月目の給料と呼ばれるボーナスも支給され、国じゅうがやや浮足立つ。多くの人が家族や友人と旅をするのもこの時期だ。
そんな旅行業界の書入れ時を目前に、旅行客を不安にさせる事件がおこった。
グローボ系列のテレビ局、エスピリトサント州TVゴゼートが12月3日づけで報じたところによると、同州ヴィトーリア行きの便への搭乗手続きをした子どもが、航空会社係員によってパラナ州クリチバ行きの便に乗せられていたことがわかったという。
テレビ局の取材に応じた子どもの父親はインタビュー動画のなかで「ゴウ(ゴル)航空へ:私の息子は行方不明になっても許すことのできるスーツケースではない」という抗議のメッセージを発している。
予定とは別の便に乗せられたのは6歳の男の子で、リオデジャネイロの空港に母親に連れられて搭乗手続を終えた。母親は搭乗口でゴウ航空の職員に息子を託し、見送った。
男の子はヴィトーリアにいる父親の誕生日会に出る予定だった。
一人旅の面倒を見てもらうための手数料として、母親は往復の航空運賃に100レアル(約3500円)加算した750レアル(約2万6000円)をゴウ航空に支払っていた。
飛行機はリオを12月2日の17時ごろ出発し、ヴィトーリアに18時頃に着くはずだった。空港に迎えに来ていた父親は、自分の息子が予定通りの便に乗り、その便は定刻にリオを発った、というEメールを航空会社から受け取っていたが、にもかかわらず、ヴィトーリアの空港に降り立った人々の中に男の子の姿がなかった。
父親は航空会社のカウンターでどうなっているのか情報を求めた。だが、何が起こったのかわかる人は誰もいなかった。
「一番とんでもないと思ったのは、息子が降りてこなかったことをカウンターに伝えた時、係員の女性は私にマイレージでチケットを買ったのか、と聞いてきたことです。全く無関心なのです。ありえません。ゴウ航空のスタッフが誰ひとり動こうとはしなかったので、私は口調を強くせざるを得ませんでした。連邦警察の詰め所に行って話をして初めて、ゴウは対応を始め、事実関係を知ることができました」(父親のヴァンデルソンさん)
約1時間後、ゴウ航空は男の子がクリチバ空港に連れていかれたことを父親に伝えた。その間父親は最悪のケース、誘拐されたかもしれない、という不安と闘っていた。
「ゴウのキャビンアテンダントは私の息子をスーツケース並みに扱ったのです。息子にどこに行くのかも聞かず、息子の行先をサンパウロ、リオ、ヴィトーリアに限定している裁判所の書類も確認しなかったのです。そして息子はたった一人でクリチバまで行かされたのです」(ヴァンデルソンさん)
ブラジルでは2歳から11歳の子供が保護者に付き添われず旅をする際、家庭裁判所の許可をとる必要がある。ヴァンデルソンさんはこの許可を取っていて、書類を子供に持たせていたという。
クリチバに着いた後、男の子はクリチバを発ち母親のいるリオに戻った。ヴァンデルソンさんによれば、子供が一人で移動をしたのはこれが初めてでこれから先もそうする気はなかった。
「私は息子を一人で旅をさせるのは不安でしたが、彼がそうすると言ったのです。もし誰かが誘拐しようとすればそれはたやすかったことでしょう」(ヴァンデルソンさん)
ゴウ航空は今回起こったことに対して男の子の家族に謝罪した。そして男の子を搭乗させる際に手違いがあり、別の便に乗せてしまったと説明した。
子供が一人で旅をするときは必ず航空会社のスタッフが見守り、何かあれば至急家族に知らせる体制をとっているという。今後は二度とこのようなことが起こらないよう対応策をとるとも述べた。
(文/原田 侑、写真/Bruno Kussler Marques)