ブラジル化粧品業界にM&Aの波!?

2018年 03月 11日

ボチカリオ

気候のせいでもあろうが、きれい好きのブラジル人は日に何度もシャワーを浴びる人が多い。街ですれ違う女性の髪からは、時間を問わず、さわやかなシャンプーの香りが漂う。

ブラジル人の美と清潔さに対するこだわりは、ブラジルを化粧品・トイレタリー世界ランキングのトップ5に入れている。この巨大市場は海外資本からも熱い視線を浴びており、コーセー化粧品グループは2017年9月、ブラジルでヘアケア製品の販売を開始した。

ブラジル市場を虎視眈々と狙う海外勢を意識してか、国内メーカーの間でも業界再編の動きが出てきているようだ。

グローボ系ニュースサイト「G1」が3月9日づけで伝えたところによると、ブラジルのボチカリオ・グループ(以下「ボチカリオ」)が同業のヴウチ・コスメチカ(以下「 ヴウチ 」)を買収すると発表した。

ボチカリオは国内有数のブランド「オ・ボチカリオ」「エウドーラ」「ケン・ヂッシ・ベレニッシ?」「ザ・ビューティ・ボックス」と、輸入品取扱店舗網「マルチB」を展開する化粧品・トイレタリーグループ。南部パラナ州を本拠とし、国内4000軒以上の販売拠点と7000人以上の販売員を持つ。自然との共存、サスティナビリティを重視する経営理念に基づいた商品開発で知られている。

ヴウチ コスメ ブラジル

ヴウチは2004年創業で商品ラインナップの広さが特徴。化粧品だけでなく、ブラシなど化粧用具も多く扱っている。国内3万5000か所に販売拠点があるが、直営ではなく販売委託の形態をとっている。

「ヴウチが傘下に加わることでわれわれの取扱商品はさらに幅広くなります。ブランドの多様化、販売網の多様化で事業が強化されることは間違いありません」(ボチカリオ・グループ社長、アルトゥール・グリンバウン氏)

ボチカリオの2017年売上はグループ全体で123億レアル(約4060億円)で、前年比+7.5%で着地している。

なお、このM&A案件は経済防衛審議会等、ブラジルの独占禁止法運用機関により審査中で、この審査を通ればボチカリオはヴウチの買収を前に進めることができる。

「この統合でボチカリオ・グループとなり、ブランド力を強化していくことになります。今後も引き続き成長路線を進んでゆきます」(ヴウチ創業者ヴウチ・ムリーロ・ヘジアーニ氏、ダニエラ・クルース氏)

このM&Aに先駆けておこった2017年のナトゥーラによる英ボディショップの買収は記憶に新しい。競争の激しい市場の中で成長していくためには、高品質で手ごろな価格の商品を求める購買層への対応に経営資源を集中させていくことが必須となってくる。ナトゥーラとボチカリオの決断はその一環ともいえよう。

ブラジルではまだまだ「外国製品」=「良質」というイメージが強く、ヨーロッパ旅行の際に友人・家族に頼まれた化粧品を買うのに数日を費やす人も多い。「いいものは外国で買う」という悲しい常識が、国内メーカーの統合・効率化・経営努力で覆されていくことを期待したい。

(文/原田 侑、写真/Divulgação)
写真上はShopping Jardim Norteのボチカリオ店舗。写真下はヴウチの製品