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ブラジルで、女性が出産方法を自由に選びたいという声がじわじわと高まる

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世界の多くの地域で、女性が医学的に必要以上に帝王切開で子供を産む傾向がある。ブラジルもまた、帝王切開が圧倒的に多いことでも知られる国だ。

しかしそんなブラジルでも、母親が分娩室でもっと発言権を持てるようにすべきだという問題提起がされつつあるようだ。時間のかかる自然分娩を選べる状況作りが、現在のブラジルではなされていないという。「The Atlantic」(4月14日付け、電子版)に、そんな記事が掲載された。筆者は同誌編集者で、社会活動家でもあるOlga Khazan オウガ・カザンさん。

ペルナンブッコ州レシフェ在住のIvana Borges イヴァナ・ボルジェスさんは妊娠を知ったとき、彼女の産科医に自然分娩を望んでいることを語った。彼女の母は手術も投薬もなしで5人の子供を産んでいることもあり、イヴァナさんも母親の例に習うことを臨んでいたという。

破水した後に彼女が病院に入った時には、担当医師はイヴァナさんの意思に反し、帝王切開によって出産するように説得を開始、「ボルジェスさんの膣は充分に拡張してない。きっと痛みに我慢できないよ」などと冗談交じりに言ったという。イヴァナさんは「ガマンできます!」とはっきり主張した。

6時間、分娩室で自然に産み出そうとしている間、徐々に当時24歳のイヴァナさんは無力感と痛みに圧倒され始めたという。痛みと医師の説得に屈して、帝王切開手術が始まったが、 医師の冗談はそれで終わらなかった。

「私は今日誕生日パーティーだったんだ。戻って私のウイスキーを飲み干したいので、君の赤ちゃんには早く出てきていただきたいね」と言った。

イヴァナさんはこの経験が元で、出産後うつ病の精神科医の助けを求めたため、上記の経験が明るみに出ることになった。

医師達や活動家たちによると、イヴァナさんの経験はブラジルではかなり一般的であるという。生まれてくるすべての赤ちゃんの82%が帝王切開によるという、ブラジルの私立病院の事情が背景にある。

ブラジルには公的医療制度もあるが、人口の約4分の1を占める比較的余裕のあるクラスの人々は、プライベート保険制度を利用することの方が多い。

プライベート保険制度は支払金額高い分、より良い設備と短い待ち時間だけではなく、出来高払い医療制度の虚飾の部分もすべて含んでしまう。一人の医師のスケジュールで、1日に多くて8回の帝王切開の手順をこなすことができる。丸1日かかって、1人か2人の自然出産のために時間を費やすのは合理的ではないことになる。

「病院はお金を生みだすマシンです」というのが、イヴァナさんの印象だ。

保険制度はもちろんこの仕組に一役買っているが、「手術で産む」こと自体がブラジル文化に根付いていることが大きな壁になっていると、オウガさんは言う。

医者側も、そもそも自然分娩を薦める理由が無く、その上、手術を受ける女性側にも、痛みに対する恐怖と分娩にかかる時間の長さ、加えて子供を産むことによって膣が緩んでしまうと考える人も多いのだという。妊婦達が帝王切開を望む大きな背景となっているために無痛分娩を選ぶ傾向が強いのだそうだ。

公立の病院では経済的に、プライベート保険を利用できる人の割合が少ないため、自然分娩の人々の数は増えるようだが、それでも約半数が帝王切開となるという。帝王切開は予約でおこなわれるが、自然分娩は大部屋の空いているベッドを探して、そこで時がくるのを待ち続けるというやり方になってしまうのだという。また、あるサンパウロ医師は、いくつかの医師は母親が自然分娩を行うためには賄賂を要求していることをオウガさんに語ったという。

もちろん、帝王切開そのものが悪いことであるわけではないとオウガさんは言う。出産が困難な状況の人や、緊急を要する問題を抱えた人など、切実に手術を必要とする人はいるからだ。しかし、現在はまだ、将来の出産、胎盤、感染症、合併症などの危険を伴う可能性がある帝王切開が一般的な出産方法となっている。

医学的に必要ではない帝王切開を行うことで、母体が手術による死亡、輸血、子宮摘出のリスクにさらされているという調査報告を2010年に世界保健機関(WHO)が発表しているという。WHOは帝王切開による出産は15%までのおさえることを推奨しているそうだ。

近年、ブラジルは方向転換をして、自然分娩推奨に舵をきり始めているようだ。連邦政府は 計画に40億USドルを費やしているという。2011年より、昔ながらの出産方法を行う利点について、医師と母親の両方を教育するプログラム「コウノトリ・ネットワーク」を始動させている。

しかし、まだまだ女性が出産方法を自由に選べる状況は浸透していない。Mariria Bhaia マリリア・バイーアさんは、数か月前に、医師のぞんざいな治療が原因で流産したという。

「患者と医師とは水平な位置ではなく医師が高い位置にいる」と語るマリリアさんは、医師による虐待には厳罰が必要で、産科病棟で女性が自立した考えでいられるための状況が必要だと説き、レシフェで抗議運動を行った。

(文/加藤元庸、写真/Divulgação/Roberto Stuckert Filho/Presidência da Republica)
写真は「コウノトリ・ネットワーク」発表セレモニー、2011年。アントニオ・アナスタシア・ミナスジェライス州知事(当時、左から3人目)、ジウマ・フセフィ(ジルマ・ルセーフ)大統領(左から4人目)、アレシャンドリ・パヂーリャ厚生大臣(当時、一番右)

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