出口が見えないブラジルの消費の縮小

2016年 05月 20日

ブラジル 消費低迷

ひとつがシュラスコ(シュハスコ)をはじめ、ブラジル人のソウルフードでもある牛肉である。国民1人あたりの牛肉消費量が2015年には前年比8.4%減で、過去15年間で最低だった。

もう1つが世界3位の市場規模にまで成長した、きれい好きのブラジルにとって欠かせないコスメ分野だ。こちらも15年には前年比8%減だった。ブラジル衛生・香水・化粧品工業協会によると、前年比でマイナスになったのは23年ぶりとのことだ。

逆に消費押し上げ要素があるとしたら、公定歩合(SELIC)の引き上げである。13年5月には8%だったSELICは、14年5月には11%に、15年5月は13.5%とさらに上昇。現在では14.25%と、3年でトータル6.25%も引き上げられた。

利率が上昇すれば、銀行に多額を預けている富裕層の貯蓄は、確実に増えることになる。10億円預けている人の場合、年利が5%アップすれば、新たに5000万円を手にするわけで、その一部が消費に回っているはずだ。

ブラジルの富裕層は一説によると19万2000人で、総資産は9660億ドルと言われており、その20%がブラジル国内の金融資産であるなら、その5%=約100億ドルが公定歩合の上昇で懐に入ることになる。

確かに今、ブラジル国内の消費市場で、唯一富裕層向けだけは活況だ。しかしそれでも、1000万人の失業で消える1000億ドルをカバーするのは難しいだろう。

首都・ブラジリアが政争に明け暮れている現在、消費を押し上げる手は何も打てていない。消費を回復するためには、雇用を押し上げる施策、そして外資の投資を呼び込む施策が待たれるところだ。

(文/輿石信男(クォンタム)、記事提供/モーニングスター、写真/Marcos Santos/ USP Imagens)

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