リオ・パラリンピックの柔道と陸上競技を振り返って

2016年 09月 19日

トン パラリンピック

9月18日(日)に閉会したリオデジャネイロ・パラリンピック。パラリンピックは人間の極限の力強さを感じさせる素晴らしい大会だと、今大会を見て改めて思った。そして、同じ種類のスポーツでも、オリンピックとは全く違った楽しみ方ができることにも、改めて気づかされた。

例えば、柔道。柔道の醍醐味は、鮮やかな投げ技の一本だろう。パラリンピックの柔道は、オリンピックとは比較にならないほど、一本の技が決まっている。

パラリンピック 柔道 広瀬

パラリンピックの柔道は視覚障害者を対象に行っているため、オリンピックの柔道と異なり、選手同士がはじめから組み合った体勢で試合が開始される。

オリンピックでは組み合わない状態で試合が始まるので、勝負を始める前に、まずは襟の取り合いを始めなければならず、5分(女子は4分)という限られた時間の大部分を、このやりとりに費やしているのが現状である。そのため、リオ五輪の男子100kg超級の決勝のように、まったく組まなくても優勝してしまうというような現象が生まれてしまうのである。

リオデジャネイロ・パラリンピックでは、日本もブラジルも残念ながら金メダルは獲得できなかったが、メダリストは多数出ており、見ごたえある柔道を見ることができたと思う。

パラリンピック 陸上

陸上のトラック競技もまた、然り。パラリンピックの陸上競技には、とてもたくさんの種目がある。車いすを使う選手、義足を使う選手、視覚障害の選手の競技といったように、同じスポーツの種目でも、数多くの試合が行われるのである。

中でも、車いすを使う競技は、とても新鮮に感じた。

陸上のトラック競技で使う車いすは「レーサー」と呼ばれ、前に小さい車輪を伴う3輪車の形状で、流線型でとてもかっこいい形をしている。そのため、この車いすを使う競技は、陸上競技というより、自転車競技の様相である。

5000mなどの長距離走では、トライアスロンの自転車競技のように先頭選手をローテーションしている姿を見て、まったく違う競技にすら感じた。

車いすで走るため、人間の脚で走る以上にコースコンディションに左右されるようだ。コースは、気温、湿度等でだいぶコンディションは異なるだろう。

オリンピックなどで見慣れているおなじみのスポーツの競技が、パラリンピックでは、まったく見ごたえが違ってくることもある。これもまたパラリンピックを感染する際の大きな醍醐味だと思うのである。

(文/コウトク、写真上/Danilo Borges/Brasil2016、写真中/Tânia Rêgo/Agência Brasil、写真下/Tomaz Silva/ Agência Brasil)
写真上、9月9日、女子柔道63㎏クラス会場に登場したパラリンピックのマスコット、トン(左)
写真中、9月9日、女子柔道57㎏クラス準決勝。左は銀メダルを獲得したルーシア・ダ・シウバ・テイシェイラ選手、右は銅メダルの広瀬順子選手
写真下、9月12日、女子陸上1500m(T54)

著者紹介

コウトク

2005年6月~2012年6月まで仕事の関係で、ブラジルに在住。ブラジル在住当時は、サッカー観戦に興じる。サントス戦については、生観戦、TV観戦問わずほぼ全試合を見ていた。
2007年5月のサンパウロ選手権と2010年8月のブラジル杯のサントス優勝の瞬間をスタジアムで体感。また、2011年6月のリベルタドーレス杯制覇時は、スタジアム近くのBarで、大勢のサンチスタと共にTV観戦し、優勝の喜びを味わった。

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