ブラジル中流階級の若者犯罪集団、偽札をネットで売買

2016年 10月 25日

ネットで偽札

TVグローボが10月24日(月)づけで報道番組「ボン・ヂーア・ブラジル」で報じたところによると、中産階級の若者犯罪組織がインターネットで偽造紙幣を大量に販売しているということがわかったという。

偽造紙幣は、今年に入ってからブラジル中央銀行が回収しただけでも35万枚に上っている。

ひと月ほど前、あるエンジニアがインターネットで携帯電話を売りに出した。防犯カメラシステムがとらえた画像によれば、二人の身なりの良い、学生と思しき若者が買い手として現われた場面が映っている。二人は現金で端末を買い、去っていった。売り手のエンジニアは偽札をつかまされた。

「支払いの際、二人は100ドル札を23枚出しました。札を確認してる時に、手触りが違うと感じました。そこで私は『この札はちょっと別の人にも確認してもらう』と言って二人を待たせました。確認してくれる相手が気づいてくれるだろうと期待していたのですが、そうはなりませんでした。結果、私は偽札をつかまされ、損失を被りました」(上記エンジニア)

偽札はあらゆる地域で見つかっている。しかも大量に。

ミナスジェライス州は、リオデジャネイロ州とサンパウロ州に続いて偽札が見つかった量では全国3位だ。中央銀行によると、セアラー州は発見された偽札の量で12位から4位に急にランクアップした。

連邦警察の注目を集めたのは、紙幣偽造にかかわるグループの人物像だ。

一般的に若く、中流階級に属していてITリテラシーもかなり高い。手口は大胆で、SNSを通じて偽札を販売している。売買専門のページを設けたり、自分自身のページを使って取引をしているのだ。

「若者たちは偽札を簡単に手に入れたいと思っていて、必ずしもそれを使うために買うわけではありません。ただ単に他の人が持っていないものを見せびらかしたいという動機だけで購入するのです」(連邦警察捜査員イゴール・セドローラさん)

あるサイトでは2レアル(約70円)札を0.75レアル(約25円)で販売している。偽造者は最低印刷部数を設定し、偽札をどう使うかについても指南している。SNSでは価格表が公開されていて、注文の品は郵便で届けられる。多くの人がこの商品の存在に興味を示している。

「我々がこれから取り調べようとしている人物は『偽札の出来はとてもいい。それなら自分で使えばいい、そもそも人に売る必要などない』と発言しています。そういうことではないのです。偽札は本物にはとても及ばない、質の悪いものなのです」(イゴール・セドローラさん)

連邦警察によると、偽札はたいていの場合、印刷が単純だが実際にはまぎれて流通してしまう。しかしながら今回の偽札操作で見つかった100レアル札を見ると、ホログラムまで入っている。中央銀行はこのような精巧な偽札を見破るためのアプリを持っている。それを使って偽札を自動的に仕分けすることはできないが、本物の札が持っている偽造防止のための特徴を示すことで偽札対応ができるというものだ。

「例えば透かしは、ここをクリックすると投影されます。10レアル札の透かしはアララ(オウムの一種)です。市民の皆様は手元のお札の透かしにどんな模様が入っているべきかを知ることで、偽札を見やぶることができるのです」(中央銀行流通責任者ジョヴァーニ・ジョゼ・ヘゼンヂさん)

透かしだけでなく紙幣の手触りも本物と偽物では異なる。本物はざらざら感がある。本物の10レアル、20レアル札の中には札の流通開始時期に合わせて色にバリエーションがあるし、50レアル、100レアル札は券面にホログラフの細工が施されている。その上、すべての券面に偽造防止のテープが入っている。

偽札を作ったり、買ったり、使った者は処罰の対象となる。長くて懲役12年の刑に処せられる可能性もある。

「インターネットだからと言って足がつかないわけではありません。ばれないと思っているかもしれませんが、そんなことはありません。少し時間がかかることはあっても必ず犯人にたどり着きます」(イゴール・セドローラさん)

(文/原田 侑、写真/Reprodução/Bom Dia Brasil/TV Globo)
写真は防犯カメラがとらえた偽札を使用したと思われる容疑者。「ボンヂーア・ブラジル」より。日本ではIPCTV/グローボインターナショナル(スカパー 514ch)で放送中