ジョゼ・パジーリャ版「ロボコップ」日本公開はじまる。「サイボーグ009」に通じる世界も!?

2014年 03月 14日

ロボコップ ゲイリーオールドマン

3月14日(金)、「エリート・スクワッド」シリーズや「バス174」などを手掛けたジョゼ・パジーリャ監督の新作「ロボコップ」(制作はアメリカ合衆国のMGM)が日本でも公開となる。

物語の舞台は、近未来のアメリカ合衆国。ロボコップを作るのは、ロボット型戦車やロボット兵士、ロボット警官などを製造して、紛争地帯や治安のよくない国などに輸出している兵器軍事産業の企業「オムニコープ」だ。

同社は、治安維持や警官の犠牲がなくなる、という理屈でロボット警官を国内でも製造販売したいが、合衆国では、人間ではなく、意思を持たないロボットが、現場で最終判断を下して警官として行動することは許されないと、議会が反対、世論も議会に賛同していた。

「オムニコープ」社長レイモンド・セラーズ(マイケル・キートン)はこの世論を動かすために、半分ロボット、半分人間で、ロボットの機能やパワーを人間の心でコントロールする、プレゼンテーション商品の製造を思いつく。

ちょうどそのころ、警察署内の汚職事件を追っていたアレックス・マーフィー刑事(ジョエル・キナマン)は、事件の核心にふれつつあったことから消されかける。一命はとりとめたが、機能しているのは脳や一部の臓器のみだった。

警官だったアレックスの臓器はレイモンドが探し求めるサンプルだった。体の一部を失った人のためにロボット技術を応用する研究の権威デネット・ノートン博士(ゲイリー・オールドマン、写真上・右)を呼んで、アレックスを、ロボット警官として蘇らせる。

表向きには、治安維持のためのロボット警官というふれこみで、所属していた署に復帰するアレックス(彼の機能や活躍ぶりは、映画を見てのお楽しみ!)。

しかし、新たに得た自身の機能を使って、自分を陥れた事件を単身捜査しはじめたアレックスは、事件の核心に近づくに連れて強大な敵と対峙することとなる…。

<ジョゼ・パジーリャ監督ならではのロボコップ>

この映画には、ストーリーを構成するいくつかのポイントがある。まずは、企業、政治家、司法との癒着で構成される社会の構図と、そこに立ち向かう主人公の物語。「エリート・スクワッド」を作ったジョゼ監督お得意の部分だ。自慢できることかどうか微妙だが、このテーマをブラジル人監督に抉らせたらリアルだぞ。

いまひとつは、人間の心は機械で完全にコントロールされてしまうのか? 機械と人間の共存は不可能なのか? という、SF作品で語り継がれてきた類のテーマ。ジョゼ監督はここにひとつの答えを出しているが、このテーマに関わる物語の展開で、重要な役割を果たすのがアレックスの妻クララ・マーフィ(アビー・コニッシュ)だ。

アビー(ロボコップ)

人の、家族や恋人への想いを正面から取り入れているにもかかわらず、それでいて、アクション映画の持つ漢気を決して台無しにしない生ぬるくない描き方に、ジョゼ監督は成功している。この部分もまた、家族や恋人との心の絆の強さをごく自然に知っている、ブラジル人監督ならではの演出力かもしれない。

このテーマの部分で、もう一人重要な役割を果たすのが、ロボコップの実際の生みの親となるデネット・ノートン博士だ。もともと人間とロボットとの融合を医療のために平和利用をしてきた博士は、いわば石ノ森章太郎の「サイボーグ009」で言えばギルモア博士のような立ち位置だ。博士の行動も、観客には楽しみのひとつだ。

それから、男が観てワクワクできるアクション映画としての部分。この部分をがっちり描くため、ジョゼ監督はロボコップにはふたりの敵を用意する。ひとりはもちろんオムニコープのレイモンド社長だが、もう一人が、同社のロボット兵器取扱い係で自身も勇猛なソルジャーであるマトックス(ジャッキー・アール・ヘイリー)だ。

アクション映画には定番の、“巨悪とは別に主人公に絡むライバル”役が、このマトックスだ。小林旭主演の日活アクション映画における内田良平、松田優作主演「最も危険な遊戯」における荒木一郎、というとかっこよすぎるが、まあ、そこに近い立ち位置のキャラだ。

ロボットはあくまで機械人形と小ばかにするマトックスは、ロボコップ始動実験のシミュレーション・バトルでアレックスに完敗したことから、ロボコップを目の敵にしている。そんなマトックスとロボコップの因縁の行方も、男子観客には見逃せないポイントだろう。ちなみに、「オズの魔法使い」を観ておくとこのパートが10倍楽しめる。

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さて。ジョゼ・パジーリャ監督の凄いところは、この物語にぶちこんだ、これらさまざまのエピソードを、とっ散らかすことなく一本のストーリーの中につじつまが合うようにまとめ上げて、作品自体を、むしろ恐ろしく小気味よい作品に仕上げていることだ。この構成力は見事だ。

そもそも、キャスティングがばっちりな映画は、その時点でほとんど成功しているといえる。オムニコープ社長のマイケル・キートン(写真上、右)、人間とロボットの融合研究の権威デネット・ノートン博士のゲイリー・オールドマン、ライバル、マトックスのジャッキー・アール・ヘイリーは、ドンピシャすぎる。この目配せもまた、見事。

80年代にサイバーパンクの名作として高く評価されたポール・バーホーベン版「ロボコップ」とはまた違ったジョゼ・パジーリャ版「ロボコップ」もまた、名作として語り継がれることになるだろう。

「ロボコップ」配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2014年3月14日(金)より、丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー。
公式Facebook:https://www.facebook.com/Robocop.movie.JP 
公式Twitter:https://twitter.com/Robocop_JP

(文/麻生雅人、写真/© 2013 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. and Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.)