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Entrevista 「聖者の午後」フランシスコ・ガルシア監督<1>

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フランシスコ・ガルシア監督の長編第一作「聖者の午後(Cores)」が、現在、渋谷ユーロスペースで公開中だ。プロモーションで来日したフランシスコ監督に映画のことや、作品に描かれたブラジルの現実などをたずねた。

「聖者の午後」の舞台は、ブラジルの大都会サンパウロ市。社会的な立場としては“中流の下”に属する3人の若者たちの日々を描いた作品だ。

TVグローボのとトレンディドラマに出てくるような“中流の上”、もしくは上流の人たち–つまり、安定して成長している経済の恩恵を受けている上流や中流の上の人たちとは異なる。同時に、警察と犯罪組織との抗争におびえながらファヴェーラなど暮らす貧困層の人たちとも異なる。ほとんど映画やドラマでは取り上げられず話題にもならない、“中流の下”の人々の生活だ。

「私が映画で表現をする上で興味を持っているのは、彼らのような中流階級の下層にいる人たちです。郊外に住んでいる人たちでもファヴェーラの住人でもなく、上流階級でもありません。また、自分と同じ世代、現在30歳くらいの世代です」

歴史的にブラジルの映画には、ファヴェーラや貧困層の生活を描いたものが少なくない。都会で生まれ育った中産階級の映像作家の間で、自分たちが知らない“ブラジルの現実”を映画を通して伝えるという使命感も、その背景にはあった。

「もちろんこれらは映画としては素晴らしいけれど、海外で好まれるブラジル映画というのも『シティ・オブ・ゴッド』、『エリート・スクワッド』のような映画がほとんどでした。ブラジルという国がどのくらい貧乏なのかという興味があるかな(笑)。中流階級の映画は海外ではあまり興味は持たれませんでした」

しかし、社会的に普遍的な人々である中流階級の生活を描いた映画は、近年、ブラジルの若い映像作家の間で主流になりつつあるという。

「2013年に公開されたペルナンブッコ州出身のクレベール・メンドンサ監督の『O Som ao Redor(オ・ソン・アオ・ヘドール)』も一例です。ヘシーフィ市の中流階級の人々を描いた作品で、ニューヨークタイムズでも評価されました。こういった映画が海外でも評価されたことは重要なことだと思います。ブラジル各地の大都市で生活している人は中流階級に属している人が多いのですから。むしろ、現在の中流階級の人々の姿を記録しておくことも大切なことだと思っています」

実は、今、上~中流の上の層と、アグレッシヴな貧困層との狭間にいる彼らこそが、ブラジルでポッカリと「取り残されている」層だったりもする。

「今年のカーニバルの期間、リオデジャネイロで道路清掃人たちがストライキを行って数日間、真夏の町中がゴミの山になって大変でした。最終的にリオ市はストを行った人たちに歩み寄って、給料のベースアップを勝ち取りました。彼らには意見を言って自分たちの環境を変えるためにはその方法しかなかったわけですが、行動を起こして環境を改善することに成功しました」

ブラジルでは昨今、低所得者層の属する人々がアグレッシヴに行動している。2013年12月から今年1月にかけて、ファンキの路上パーティを禁止された郊外の若者たちが、ショッピングセンターで集会を開く「ホレジーニョ」とよばれるムーヴメントを起こしたことも記憶に新しい。結局彼らも、一部のショッピングセンターの駐車場で合法パーティを許可されたり、居住区の公共施設を充実させる方向に行政の目を向けさるなど、行動によって、自分たちの生活や運命を変えることに成功した。

ホレジーニョの若者たちはファイスブックなどSNSを使って集会を行い、連帯したこと画運動へとつながった面も大きい。インターネットの普及にともない、社会と積極的にコネクトしている。

ところが、「聖者の午後」の主人公の3人、ルカ、ルイス、ルアラは、インターネットを使う習慣もなく、明るい未来を思い描く根拠もない、社会と断絶された存在だ。

「3人は、サンパウロ市の都市部で生活しています。モデルになっているのは自分がかつて住んだことがある、市の東部にあるベレンという地域。イタリア人移民が多いことで知られています。この地域は、再開発の波にも取り残された地域です。祖母と暮らしているルカのライフスタイルには、ベレン地域のイタリア系家庭の影響があります」

時間が止まってしまった街で暮らすルカは、主人公3人組の象徴的な存在だ。そして主人公の3人組は、それぞれみな、“取り残された存在”だ(つづく)。

(写真・文/麻生雅人)
「聖者の午後」(http://www.action-peli.com/cores/)は渋谷ユーロスペースにて公開中

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