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電光石火の自転車ひったくりと、夜のファベーラ

ナタール(ナタウ)

ワールドカップブラジル大会、日本対ギリシャ戦が行われた地、ナタール(ナタウ)。試合が終わった後、私は宿で知り合った友人と4人でタクシーを拾い、宿付近まで戻り夕食をとる事にした。

代表戦が終わったのが21時前後、腕時計に目を向けると、既に22時を回っていた。もちろん、こんな時間にレストランやハンバーガー屋なんて開いているわけがない。

とりあえず海沿いをぶらぶらしながら店を探すことに。路肩でひっそりとやっているお店があったので、そこでお腹を満たす事にした。

1軒目では、エスペチーニャ(肉の串焼き)とホットドックを食べた。テーブルと椅子があり、穴だらけのパラソルがいい感じの屋台の2軒目では、お酒を頼む事にした。日本代表が負けた事に対し、やけくそな感情もあっただろうか。話とビールがよく進んだのを覚えている。いつの間にか、日本の飲み屋で飲んでいる様な感覚になっていたのかもしれない。

その瞬間であった。自転車で何者かがテーブルの横を通り過ぎた瞬間、椅子がぶっ飛んだ。

最初は、ただの酔った輩がぶつかって来たのかと思ったのだが、気がつくと、仲間のうちの1人の荷物がないのである。

「あっ」と全員が声を合わせるや否や、被害者の1人が2人組の犯人を追いかけ始めた。犯人は追いかけてくる日本人に驚き、チャリを乗り捨て、大通りを横切り、暗闇の中へ被害者と共に消えて行ってしまった。残された私たち3人はその場から動く事すら出来なかった。

仮に動くことができたとしても、きっと私たちはどうすることもできなかっただろう。2人が消えて行った先は、Favela(ファヴェーラ)と呼ばれるスラム街だったのだ。

3人が途方に暮れていた時、偶然にもパトカーが来たので、別のテーブルで呑んでいたブラジル人が親切に事情を説明してくれた。警察官に「とりあえず、乗りなさい」と言われ、1人を現場に残し、私ともう一人でパトカーに乗車し、ファベーラの中に侵入する事になった。

パトカーの中は、拳銃を持った警察官が3人と日本人が2人。ものすごく窮屈であった。パトカーだからといって、普通乗用車との違いがあるわけでなく、乗り心地が言い訳でもない。内装は、ブラジルでよく走っているマニュアル式の車と同じである。

私自身、これまでいくつかのファベーラに足を踏み入れた事はあるが、夜に入ったりは決してしない。理由は単純、「危険」だからである。

日が出ている時ですら感じるファベーラ独特の雰囲気に加え、暗闇の中で感じる恐怖心が交わり、身体の中の危険メーターが完全に振り切れるのを感じた。

街頭がまったく無く、どこまでも真っ暗な道。車のライトに反射して光るファベーラの住人達の目。車内を覗き込む人達の視線。銃に手を当てている警察官。途切れる事の無いパトカー内の無線連絡。口から泡を吹いて独り言を呟いている麻薬中毒者…。

突然、目の前に犯人が現われ、銃を突きつけてくるのではないかという緊張感に襲われた。そんな恐怖心と闘っている私をよそに、舗装されていないでこぼこの道に車体を削られながら、パトカーはぐいぐいと奥へ進んで行く。

ファベーラに入ってから、10分ぐらいであろうか、警察がもう見つけられないと判断して、一旦、事件現場に戻る事にした。

パトカーが現場には戻った時には、被害者の友人は既に宿に帰っていた。しかし、盗まれた荷物は未だに犯人の懐のままである。被害者が無事宿に戻った事を警察官に告げると、特に何をするわけでもなく、パトカーはその場を去ってしまった。

ブラジルの犯罪率は日本の400倍と言われている。少しの気の弛みですらも、彼らは嗅ぎ付ける事を忘れてはいけないと改めて感じさせられた。日本代表の敗戦と共に忘れられない思い出となった。

(写真・文/HARU)
写真は日が出ている時のナタウ市内風景。写真右側に見える黄色い屋根の見えるお店で事件は起こった

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