3Dプリンターが女性を救う!? 新型インソールがブラジルに登場

2017年 05月 11日

ブラジル 3D インソール

ハイヒールで颯爽と歩く女性の姿に目を奪われるのは古今東西変わりはないようで、世界のあらゆる地域で都市文化の一部となっている。

しかしながら、その姿で人を魅了し続けるために、外反母趾、巻き爪、爪の壊死、指や足裏のタコなど、多大な犠牲を払っているのが現実だ。

そんな女性たちを痛みから救う起業家がサンパウロにいるという。

TVグローボが5月7日(日)、経済情報組「ペケーナス・エンプレーザス・イ・グランヂス・ネゴーシオス」で伝えたところによると、御年80歳の起業家、トマス・カゼーさんは完全にカスタマイズ化した靴のインソールを3Dプリンターで製造・販売しているという。

35年前にアメリカ合衆国からブラジルに移住したトマスさんは、自身の起業について次のように話している。

「かわいそうに、ハイヒールを履く女性の95%は足の痛みに苦しみ、そのうち62%は2時間以上は履いていられないというのです。私たちのインソールは32台の3Dプリンターを使って一人一人の足に合わせて傷みが取れるように作ります。当社の商品を使っていただくことで傷みが42%減り、今までよりも長い時間ハイヒールを履いて、美しく魅惑的な姿でいられることになります」(トマス・カゼーさん)

以前のインソール製造工場では材料が600平方メートルを占拠していた。3Dプリンターでの製造に切り替えてからは、材料の占める面積は80平方メートル程度まで減少したため、普通の商業ビルで製造ができるようになった。

製法の変更は廃棄物量と製造時間の激減にもつながっている。ブラジル 3D インソール

以前のインソールは、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)を使って製造しており、注文を受けてから顧客に届けるまで5日かかっていたが、3Dプリンターを使用するようになってから納期までの日数は約半分に減った。

3Dプリンターはまだ高価で、1台1万5000~1万6000レアル(約52万円~56万円)はかかる。それでもトマスさんは製法を変えた価値はあるという。

「変える価値はもちろんありました。私たちの会社は以前の製法では倒産寸前でした。その時に決定的なコスト削減方法にたどり着きました。変更したのは大正解で、年末から現在までの間にすでに昨年の売上の70%を売り上げています」(トマスさん)

製法を変えることにより、製造コストは40%以上下がった。

この方法のアイデアはトマスさんの会社の元従業員で、今は3Dプリンター製造業者となっている人から出てきた。自社のプリンターで作ったインソールのプロトタイプをトマスさんに送ってきたのだ。

プリンターは民生機に調整を加えれば済んだが、最も困難だったのは、材料をどうプリンター仕様にするかという点だった。通常、プリンターで使う素材は固いものでなくてはならないが、インソールには柔軟性の高い素材を使う。そのため、ローラー自体の構造を変える必要があった。

製品を作るにはまず顧客の足をスキャンするが、ここは理学療法士が担当する。スキャンと合わせて測量をし、それらのデータをコンピューターに入力する。理学療法士は顧客の足の硬さや痛みの出やすい部分を調べ、3Dプリンターにデータを送る。そうすることで顧客の足のデータに合わせたインソールが出来上がるのだ。

この製法で、トマスさんはすでに14店舗を展開している。7店は直営、あとの7点はフランチャイズ店だ。

トマスさんは事業への強い動機づけがあった。自分自身がひどい足の痛みに苦しんでいたのだ。

「痛い、とっても痛かった。歩くたびに足首がとっても痛かったんです」(トマスさん)

そんな彼は現在、自分で作ったインソールを使って毎朝4キロの散歩を楽しんでいる。

Pés sem dor Palmilhas 3D(ペス・セン・ドール・パウミーリャス 3D)
住所:Alameda Ribeirão Preto, 130 – Conjunto 112, Bela Vista São Paulo/SP – CEP: 01331-000
電話: (11) 3373-8180/ (11) 96896-5425
ウェブサイト: www.pessemdor.com.br

(文/原田 侑、写真/Reprodução/「Pequenas Empresas & Grandes Negócios」/TV Globo)
写真はブラジルの衣料品店。TVグローボ「ペケーナス・エンプレーザス・イ・グランヂス・ネゴーシオス」より。TVグローボ系列の番組はIPCTV(グローボ・インターナショナル)で放送中。視聴の問い合わせは、080-3510-0676 日本語対応ダイヤルまで