ブラジル大手造船会社に日本企業連合が資本参加。プレサル開発に貢献も

2013年 10月 23日

三菱重工業、今治造船、名村造船所、大島造船所、三菱商事の5社が、10月22日(火)、ブラジルの大手造船会社エコビックス-エンジェビックス社(ECOVIX-Engevix Construções Oceânicas S.A.:エコビックス社)に資本参加することで合意、株式購入契約を締結したことを発表した。

ブラジルの海底油田開発のさらなる発展を目指す国内産業育成策に沿って、先進的な技術や運営ノウハウを提供することで日伯造船業の相互振興をはかっていくのが狙い。同国の造船事業に日本の造船会社と商社が連合して出資する初の案件となるという。

日本連合は、三菱重工業をコンソーシアムリーダーとして、5社が現地に設立する特別目的会社(SPC:JB MINOVIX INVESTIMENTOS E PARTICIPAÇÕES S.A.)を通じ、エコビックス社株式のうち30%の出資参画を果たして、エコビックス社の経営に参画する。

日本連合のSPC内における出資比率は、三菱重工業が約半分で残りが他の4社による出資となり、ブラジルの独占禁止法管理当局からの許可が下り次第出資を完了する予定とのこと。

契約調印は東京において、日本とブラジルの関係当局出席のもとで、エコビックス社および三菱重工業、ならびに今治造船、名村造船所、大島造船所、三菱商事の6社によって行われた。

エコビックス社は、エンジニアリングや発電などを幅広く手掛けるジャクソン(JACKSON)グループの傘下にありる。同グループは、エコビックス社のほか、ブラジルの大手エンジニアリング会社であるエンジェビックス社(ENGEVIX Engenharia)、クリーンエネルギー発電会社のデセンビックス社(DESENVIX)、インフラ関連の運営を手掛けるインフラビックス社(INFRAVIX)を統括する持株会社。

エコビックス社は2010年、ブラジル国営石油公社ペトロブラス社向けに、沖合のプレソルト層(プレサル、プレサウ)油田から石油を採掘する同国のプログラムをサポートするFPSO(洋上浮体式生産・貯蔵・積出施設)船体8隻を建造するために設立されたという。2012年8月には、ブラジル政府向けにドリル船3隻を受注しているとのこと。

また同社は、ラテンアメリカで3番目に大きな年金基金のFUNCEF(Fundação dos Economiários Federais)と共同で、南部のリオグランデ・ド・スル州(Rio Grande do Sul)にある造船所(持株会社名:RG ESTALEIROS)を運営。同造船所は従業員5,000人強で、2,000トンのガントリー・クレーンを備えた国内最大のドライドックを持っている。

三菱重工業によると、プレソルト層に埋蔵されている石油はここ数十年で最大の発見で、埋蔵量確認とその採掘には技術的課題があったたが、ペトロブラス社はこの課題の克服に成功。ブラジルは数年後にはこの石油を国内消費するだけでなく輸出することを計画しており、埋蔵量探査とその後の石油生産は、今後20年にわたる国家計画の重要な部分を占めているという。

こうした背景からブラジルでは、新技術の導入および造船業を含めた地場産業の育成が進められる一方、沖合のプレソルト層の油田を開発・掘削するためのドリル船やFPSOをはじめとする各種船舶・海洋構造物の需要が増大しているという。

日本連合5社は資本参加を通じて、沖合での安全な石油生産に不可欠な各種設備の品質向上や納期短縮などの技術でエコビックス社に協力することにより、ブラジルの国家戦略にも貢献。併せて、日本の優れた造船所経営手法や、船舶・海洋構造物に関する先進技術を幅広く提供することで、ブラジル第一位の造船会社を目指す同社を強力に支援していく方針。

(文/麻生雅人)