消えゆくブラジル名物の公衆電話オレリャォン。半数以上を撤去へ
2014年 09月 6日オレリャォン(大きな耳)。この愛称で親しまれてきたブラジルの街頭公衆電話。ヘルメット状の電話のカバーが大きな耳に似た形をしていることから、そう呼ばれている。
ブラジル全土に設置されているこのオレリャォンの半数以上が姿を消すと、9月3日(木)、メディア「コンヴェルジェンシア・ヂジタウ」が伝えた。
この発表は国立通信局(ANATEL)の決定として同局のカルラ・クロサーラ広報担当官によって公表された。現在、全国に設置されている76万3000個のオレリャォンのうち60%に当たる46万1300個が撤去されるという。
カルラ氏は「公衆電話の81%は、1日に4回だけつかわれている」状態だという。平均では1日4分間、一か月には120分しか、一般的に使用されていないという。
ただし、国立通信局はオレリャォンの利用頻度が減っていることは携帯電話にとってかわられているだけだとはいえないとしている。同局は、携帯電話もまた、通話という面では利用頻度が減っており、携帯電話の1か月の通話利用は平均で128分だという。
撤去の最大の理由は、メンテナンスの費用が、通話による収益の2.5倍にまで上回っている点とのこと。
ちなみに、ブラジルの街頭公衆電話は、最初から“オレリャォン”だったわけではない。ブラジルの最初の公衆電話は、諸説あるが、雑誌「アヴェントゥーラ・ナ・イストリア」(アブリウ)によると1935年にリオデジャネイロ市内旧市街区のガレリアの中に設置されたものだったという。また同誌によると、最初のオレリャォンが登場したのも同じくリオ市で、こちらは1972年とのこと。
スタンダードなオレリャォンは“大きな耳”の形のカバーが取り付けられているが、観光地などでは、ペルナンブッコ州の盗賊ランピォアンの帽子型や伝統芸能フレーヴォで使う傘型、アラゴアス州マセイオのココナッツや貝殻など、ご当地ゆかりのデザインによるカバーもある。
2012年には、サンパウロ市内各地で「コール・パレード」(5月20日~6月21日)が開催され、参加アーティストたちが思い思いに造形、もしくはペインティングしたオレリャォンが街を彩った。
(文/麻生雅人、写真上/Arthur Muranaga、写真下/Rafael Neddermeyer/Fotos Públicas)
写真上、2014年7月、ワールドカップブラジル大会期間中にパウリスタ大通りでみかけたデコ・オレリャォン
写真下、9月4日、スタンダードスタイルのオレリャォン