強盗をするつもりだった男が、強盗被害にあった女性に寄付

2014年 11月 15日

サンヴィセンチ市

サンパウロの沿岸部にあるサォンヴィセンチ市にて、珍事件が発生した。現地メディア(「G1」11月)が伝えている。

同市に住む教師ナイール・アパレシーダ・ダヴィノさん(43)は、11月1日の午後に強盗に出くわした。恐怖を感じながらもナイールさんは、強盗に「ちょっと前に別の強盗に遭ったばかりなのよ」と嘆いてみせたという。

すると、これを信じた強盗はナイールさんに同情、結局何も奪うことなく、なんと車に乗って帰宅できるよう、彼女に10へアイスを渡したというのだ。

ナイールさんは事件当時、ビーチの遊歩道を歩いていたという。

「私はペットショップに預けていた犬を迎えに行くために家を出て、ハーフパンツの後ろのポケットに鍵や携帯電話を入れていたの。近所なので、サンダルに部屋着といった、ラフな服装だったわ」とふり返る。

強盗に遭った時、彼女は大変な恐怖を抱いていたが、どうやってこの状況から抜け出すか、とっさに考え始めたという。

「私は、自分の手を見たら何も持っていなかったので、ちょうど強盗に遭ったばかりで家に帰るところだと言おうと思いました」

当初この泥棒は、ナイールさんの説明を疑っていたフシもあったようだが、手ぶらの彼女を見て話を信じきってしまったようだ。

「話をしたあと彼が自分のポケットに手を入れたので、てっきり銃で撃たれるのだと思い生きた心地がしませんでした。でも彼は、しわくちゃな何かを取り出して私の手に置き、車をつかまえて家に帰るよう言いいました」

しかし恐怖でいっぱいだったナイールさんは、とにかくこの場から逃げ出すことで頭がいっぱいだったという。

「ようやくその場から離れて、改めて手の中を見たとき、彼が私を気の毒に思って握らせたのが10へアイス札だったたことを知ったのです」と彼女は説明した。

ナイールさんはだますつもりはなかったが、とっさの対応が思わぬ結果を呼んでしまった。その後ナイールさんは予定を変更し、犬を迎えに行く前に、彼女の夫の職場まで歩いて向かったという。また、この話を聞いた彼女の友人たちは、次々にジョークを言い始めたという。

「強盗は私に同情してくれたけれど、友人の中には、『私は教師をやっている』って言ったほうがよかったんじゃない? っていうひともいました。そうしたら(同情して)もっとお金をくれたんじゃないかって」とナイールさんは笑って語った。

ちなみに、警察の報告書には「泥棒から盗んだ」と記録されてしまったと、彼女は最後につけ加えた。

(文/柳田あや、写真/Diego3336)
写真はロープウェイの上から眺めたサンヴィセンチ市