ブラジル経済悪化の中で船出するジャパンハウス
2015年 04月 9日ブラジル地理統計院(IBGE)が3月27日、14年のGDP(国内総生産)は09年以来となる前年比0.1%増の低成長だったと発表した。
GDPの算出方法を直前になって変更することでわずかながらプラスを確保したが、すでにジョアキン・レヴィ財務相がいろいろな機会に14年はマイナスもありうると話していたので、大きな問題にはならなかった。
工業部門は同1.2%減となった一方、農業部門とサービス部門はそれぞれ同0.4%増、同0.7%増の成長を見せている。食料品を中心としたスーパー業界もしぶとく1%台の成長を見せた。
しかし、15年はこれまでの急激な経済成長のゆがみと、そこに巣食った労働者党を中心とした連立与党の汚職により、政治経済面での膿みがどんどん出て、GDPがマイナスになることは明らかで、4月1日に全国工業連盟が発表したジルマ(ジウマ)・ルセフ大統領の支持率調査結果においても64%の不支持率となった。これは89年7月にジョゼ・サルネイ政権が記録したワーストと同率である。
ブラジル経済にブレーキがかかった後でも、力強い成長を見せていた労働者党の支持基盤である北東部においても、ついに成長に翳りが見えており、政府支持率も急落し始めている。
15年は、あらゆる公共料金の値上げ、レアル安、さらに輸入関税上昇による輸入品の価格高騰、ペトロブラスの巨額贈収賄事件、これまで大きな雇用を生んでいた製油業界、建設業界、自動車業界のレイオフ・ラッシュ、さらには銀行の貸し渋りによる多くの企業の倒産など、マイナス材料には事欠かない。
このような最悪の環境下で、日本政府は15年から「日本に関する様々な情報がまとめて入手できるワンストップ・サービスを提供」し、「民間の活力、地方の魅力なども積極的に活用したオールジャパンでの発信」ができるジャパンハウスという常設施設をサンパウロに設けるプロジェクトをスタートさせる。ただ、見方を変えるとなかなかいい時期にスタートするともいえる。
ブラジルは今、次の成長ステップに進むためにもがいており、外国の政治・経済における成功例に学び、真摯に耳を傾ける環境になってきている。筆者の元にも多くのブラジル企業から日本企業の効率的かつ経済的で、高品質の技術・商品を導入したいという声が寄せられている。
ジャパンハウスにおける日本のテクノロジー紹介の部分においてだが、ただ日本の最先端技術を見せるだけではなく、ブラジルが現在抱えている問題・課題にフォーカスして、それに対する日本のソリューションを提示・提案できる場となれば、両国にとって実りの大きい施設となるだろう。
(文/輿石信男/クォンタム、記事提供/モーニングスター、写真/Wilson Dias/Agência Brasil)
写真は2014年8月1日、ブラジリア。ブラジルを訪問した安倍晋三首相(左)とジウマ大統領(右)