【ブラジル】今年第3四半期、ドル高・金利高で企業利益の81%が消失
2015年 12月 4日一方、営業利益の面でも強さは見られない。売上は12.9%の増加を示しているが、インフレ率の9%を考慮すると、増加率は微々たるものだ。
「国内を市場とする各企業は、需要落ち込みの影響でEBITDA(利子・法人税・減価償却差引前利益)と純利益の減少が顕著です」(TOV金融ブローカーエコノミスト、ペドロ・パウロ・シウヴェイラ氏)
シウヴェイラ氏によると、粗鋼、金属加工業界はドル高と国内外の需要減の影響を受けており、国内では建設業、自動車産業での需要が弱いことが粗鋼生産に影響を及ぼしているという。
海外の市場では、中国の経済成長率鈍化を受けて粗鋼にダブつきが出てきたことから輸出が振るわなかった。それに負債の大きさ、660億レアル(約2兆1000億円)にかかる金利の負担が追い打ちをかけた、とエコノマチカは言う。
ボベスパ上場企業の財務諸表に悪影響を及ぼしたその他の要因として原価の上昇(+15.9%)が挙げられる、と語るのは経営管理研究財団(FIA)で教鞭をとるマルコス・ピエルッシ氏。燃料や電気などの価格上昇に伴いEBITマージン(利子・法人税差引前利益を売上高で割って算出する、収益性を示す指標)の縮小が起こった、とピエルッシ氏は語る。
同氏はまた第3四半期の財務諸表から上場企業が守りの姿勢に入っていることがうかがえるという。現預金が1750億レアル(約5兆6000億円)から2280億レアル(約7兆3000億円)へ30%増加しているからだ。この変化は好ましいことではない。逆に、ピエルッシ氏の言葉を借りれば「この増加は企業が投資に対する担保として現金の確保に向かったことを示しており、今後さらに負債を増加させていく可能性がある」とのことだ。
(文/余田庸子、写真/Rovena Rosa/Agência Brasil)
写真は11月27日、ブラックフライデーの安売り商戦がはじまったサンパウロ市街の商店街。需要が落ち込む中小売店にとって起死回生の日だったブラックフライデー。ブラジル全国では、昨年比76%増となる約15億3000万レアルを売り上げたという