独自通貨の効用!? ブラジル北東部の町で凶悪犯罪ゼロに

2016年 05月 24日

独自通貨 ブラジル

一時期の1ドル40レアルという激安状態から少し回復し、3.5レアル前後で推移するブラジルの通貨レアルの為替相場。レアルの乱高下が社会不安を増幅させる状態からは少し落ち着きを取り戻したようだ。

そんなご時世に、社会不安とはほぼ無縁のコミュニティがブラジルに存在する。その秘訣は、独自通貨の存在だという。

グローボ系報道番組「ジョルナウ・ナシオナウ」が5月16日に伝えたところによると、ブラジル北東部の小さな町で導入された独自通貨が町の平和維持に貢献しているという。

ピアウイー州の州都テレジーナから250キロ離れた町、サン・ジョアン・ド・アハイアウ市は少なくともここ1年、殺人や強盗などの凶悪犯罪の記録がないという。そして、現地に配属されている警官はたった3人とのことだ。

住民と警察によれば、この平穏はこの町独自の通貨「コカウ」によって保たれているという。

この小さな町の生活は他の都市と比べてずいぶん違っている。穏やかな生活は住民にとって誇りの源だ。

「本当に安心して暮らせます。夜も普通に歩けますし、自転車で街を走るのは本当に気持ちがいいです」(年金生活者、セザリーナ・ボルジェスさん)

主婦のフランシスカ・ダス・シャガス・メスキータさんは他の町で見られるような暴力沙汰はこの町にはない、と言い切る。

「家の玄関を開けたままだと心配で眠れないような暴力的な事件は、この町にはありません」(フランシスカさん)

独自通貨「コカウ」は同市のみで流通する通貨。この通貨で住民は給与や給付金受け取り、各種の料金を払い、借入も行う。

「この通貨は安全です。なぜなら中央銀行に承認されていますし、レアルに裏付けされた通貨だからです。私たちは中央銀行に手持ちのコカウに相当するレアルの残高も持っています」(サン・ジョアン・ド・アハイアウ市財務担当、ジョアン・アウヴェス・ダ・クルースさん)

コカウはレアルと同価とされているが、市内の商業施設で買い物をする場合、割引を受けられるなどの特典があり、実質購買力はレアルよりも高い。たとえば10レアル(約330円)の商品をこの町で購入すると9コカウで買える。この割引部分は地域の財政担当局から補助される仕組みになっているという。

コカウ札には偽造防止の印刷技術を使い、町の経済を象徴する肖像が印刷されている。市のコーディネーター、マウロ・ホドリゲスさんによると、銀行はコカウの造幣に0.15レアル(約5円)かけているという。

紙幣デザインはセアラー州フォルタレーザ市にあるパウマス造幣所内の地域銀行札管理・認証責任部署で保管されており、ここでコカウ紙幣が印刷されているとのことだ。

一般的に独自通貨経済圏のお金はその地域でしか通用しないため、よそ者の強盗にとってはうまみがかなり薄い。それが町の治安維持の一助になっているのであれば治安維持の一つの選択肢となりうるが、独自通貨制導入は適正経済規模、他の経済圏との物理的な距離などの制約を受けそうだ。

(文/原田 侑、写真/Reprodução/Jornal Nacional/TV Globo)
写真はTVグローボ「ジョルナウ・ナシオナウ」で紹介されたサン・ジョアン・ド・アハイアウ市の通貨。TVグローボ系列の番組はIPCTV(グローボ・インターナショナル)で放送中。視聴の問い合わせは、080-3510-0676 日本語対応ダイヤルまで