ブラジル・エジプト投資機会フォーラムがキャンセルに。「大使館をテルアビブからエルサレムへ移す」という“ブラジルのトランプ”ボウソナロ次期大統領の発言が原因か
2018年 11月 7日10月28日(日)に行われたブラジル大統領選挙の決選投票で、軍人出身で極右の政治家ボウソナロ氏(社会自由党 PSL)が次期大統領に選出された。就任は2019年1月1日で任期は4年となる。
「ブラジルのトランプ」と呼ばれているボウソナロ(ボルソナロ)氏は議員時代から人種差別発言やセクシャルハラスメント発言でたびたびニュースになっていたが、大統領選の当選後の発言が、ブラジル経済界に波紋を投げかけている。
ボウソナロ氏がアメリカ合衆国のトランプ大統領に倣い、在イスラエルのブラジル大使館をテルアビブからエルサレムへ移すという発言が、アラブ諸国で波紋を広げている。
大使館をエルサレムへ移すという発言はボウソナロ氏が投票前から公表していた内容だが、次期大統領に選ばれた後の11月1日(木)、イスラエルの新聞とツイッターで改めてこれを実行すると発言したことから、波紋が広がったという。
パレスチナ解放機構(PLO)の執行委員のひとりハナン・アシュラウィさんはAFP通信に対し、在イスラエルブラジル大使館をテルアビブからエルサレムに移す計画は国際法上違法であり、地域を不安定化させる挑発である指摘して、ブラジルが国際法に反する一派に属したことを残念に思うと述べた。
大使館の移設を実行すると、ブラジルは合衆国とガテマラに次ぎ、大使館をテルアビブからエルサレムへ移す第三番目の国となる。
パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配しているハマースのサミ・アブ・ズフリ報道官は、ボウソナロの決定は明かな敵意を持った行為であるとツイッターで抗議を表明した。
「テルアビブからエルサレムに大使館を移すというブラジルの時期大統領の決定を、我々は拒絶する。パレスチナ人、アラブ世界、イスラム教徒に敵対する行為だと我々は考えている」と同氏は書いている。
一方、イスラエルのネタニヤフ首相は、ボウソナロ次期大統領に「ジャイール・ボウソナロ大統領、友よ、祝辞を述べます。ブラジル大使館をエルサレムに移設することは、歴史的で公正で感動的な一歩です」と11月1日に賛辞を送ったという。
外交官やアナリストは、この大使館移設が、ブラジルを外交上、世界から隔絶させるものであり、70年以上も維持してきた両者のバランスをとってきた伝統が破壊されると警告しており、アラブ諸国とのビジネスが困難になっていくことを懸念していたが、11月5日(月)、同じく「オ・グローボ」が、エジプト政府が、8日(木)から11日(日)に予定されていたブラジルのアロイージオ・ヌネス外務大臣のエジプト訪問を、更新日程なくキャンセルしたと伝えている。
アロイージオ外務大臣はアブドゥルファッターハ・エルシーシ・エジプト・アラブ共和国大統領及びシェリーフ・イスマイール首相と面談する予定だった。
さらに、同じ期間にエジプトで予定されていた「第2回ブラジル・エジプト投資機会フォーラム」も更新日程なくキャンセルされたと「ブラジル・アラブ商工会議所」がホームページで告知したという。すでにブラジルに到着していた約20名のブラジルの起業家は帰国を余儀なくされたという。
このエジプト側によるキャンセルは、、在イスラエルのブラジル大使館をテルアビブからエルサレムへ移すとするボウソナロ次期大統領の発言に対する報復措置とみられると「オ・グローボ」は報じている。
ブラジルはエジプトに対する貿易黒字が大きく、2017年9月には南米南部共同市場(メルコスール)とエジプトとの自由貿易協定(FTA)が発効された。2018年1月から9月にかけてブラジルは、牛肉、トウモロコシ、砂糖、鉱物を中心に、アラブ諸国に14億5千万米ドルを輸出したという。
ただしボウソナロ次期大統領は、その後のテレビ出演で、大使館の移設はなにがなんでもやるというほどのことではないと、再考する余地をにおわせているという。
(文/麻生雅人、写真/José Cruz/Agencia Brasil)