ブラジルで武器市場が拡大か

2018年 11月 25日

銃 規制緩和 ブラジル 自由化

銃規制の緩和を公約に掲げたボウソナロ(ボルソナロ)氏が次期大統領に選出されたことを受け、ブラジルにおける武器市場の盛り上がりを期待して、国外の武器メーカーの関心がブラジルに向けられていると11月20日づけで「ドイチェ・ヴェレ ブラジル」などが伝えている。

また、すでにブラジル国内では銃の射撃講習の需要が高まっており、サンパウロ南部で50年以上の歴史を持つピラチニンガ射撃クラブでは、入会希望者が日に日に増えているという。

射撃インストラクターのセルジオ・ビスクオーラさんによると、同クラブではすでに施設に応じた数の会員を擁している上に、そもそも同クラブはあくまでスポーツとしての射撃を楽しむクラブとのことで、武器が治安問題を解決すると信じる人々の入会は求めておらず、希望者の急増に困惑しているという。

サンパウロ市を拠点に治安と平和の維持活動を行っているNGO団体「平和主義協会」のフェリッピ・アンジェリ顧問は、なにかしらの変化は避けられないだろうと予測する。

「私たちは、皆を武装させようという悲劇が実行されないように闘っていきます。しかし何かしらの変化が起こることは避けられないでしょう」(フェリッピ・アンジェリ顧問)

一方、武器に関する3722号法案を推進するホジェーリオ・ペニーニャ下院議員(MDB-SC/ブラジル民主運動党 サンタカタリーナ州)は「プロジェクトを来年の前半には本会議にかけられることを期待している」と語っているという。

記事は、武器に関する規制を緩和する法改正が行われた場合、ブラジルにおける武器や弾薬市場に及ぼす影響を示唆している。

武器に関する3722号法案に関しペニーニャ下院議員をサポートしたコンサルタントのファブリシオ・ヘベーロ氏は「法改正そのものよりも、(ブラジルの銃器メーカー)タウルス社が独占していた市場が解放されることによるインパクトは大きいでしょう。現時点ではブラジル人にとって銃は高価なものです」と語っているという。

ブラジルでは2003年に施行された銃器規制法により銃の所持は厳しく制限されるようになったが、厳しい規制がある中でも、年々、銃の市場は都市部を中心に着実に拡大しているという。セミオートマチック銃は平均で6000レアル、リボルバー銃はその約半値とのこと。連邦警察によると個人による銃所持の登録数は2004年には約3000件だったのが2017年には3万3000件になっているという。

現在、連邦警察と陸軍が銃器の登録と検査を担当しているが、ブラジル国内に64万6千の銃器が合法的に流通しており、その半分以上が市民の手に渡っていると推定されているという。

ブラジルで銃器を大きな規模で製造販売している唯一の企業であるタウルス社は、すでに影響が起きていることを感じているという。

現在はタウルス社が扱っているものと同類の製品は、ブラジルへの輸入を制限する規制があるとのことで、2018年の1月から9月までの間で50%増の売り上げがみられたという。

ボウソナロ氏が選挙で選ばれたことと銃の規制緩和による銃の需要の増加の期待からタウルス社は2018年の第二四半期と第三四半期の間で80%の収益増があったという。

とはいえ同社の9カ月の累計収益のうち国内市場で得られたものは20%以下とのこと。主力市場はアメリカ合衆国であり、現在マイアミにある生産拠点をジョージア州に移転する計画があるという。

規制緩和はビジネスの拡大を招くと考えられる。独ザウアー&ゾーンのアメリカ合衆国法人シグ・ザウアー、チェコのCZ、アラブ首長国連邦のカラカルといった銃のメーカーが、すでにブラジルに拠点をもつことを公表しているという。

(文/麻生雅人、写真/SSP-BA)
写真は2017年10月17日。バイーア州南部で実行された銃器密造工場解体作戦により多くのショットガン、ピストル、リボルバーが、テイシェイラ・ジ・フレイタス市の3つの拠点で発見、押収された