政府による新型コロナウイルス感染者数データ隠しに、ブラジル国内の大手メディアが一致団結して対抗

2020年 06月 9日

写真は6月8日(月)、サンパウロ州カンピーナス市。この日、同市開発庁の職員が朝6時半から7時半の1時間、市のセントラルターミナルで利用者の体温測定を実施した。測定は今月中実施されるという(写真/Emdec)

ジャイール・ボウソナーロ大統領の政権が新型コロナウイルスの感染者やパンデミックに関するデータへのアクセスを制限したことに対抗して、国内の大手メディアである「エスタード・ジ・サンパウロ」、「フォーリャ・ジ・サンパウロ」、「オ・グローボ」、「G1」、「エシトラ」、「UOL」らがパートナーシップを形成した。上記メディアが伝えている。

各メディアは、26州と連邦直轄区の各自治体が発表したデータをもとに、6月8日(月)、新型コロナウイルスの感染状況に関する独自に調査した総合データを公表した。

データはメディア連合チームが、各州及び連邦直轄区の保健局から直接データを収集して統計が作られるという。

普段はライバル同士の各メディアが一致団結して政府のデータ隠しに対抗するという前例のない今回の行動は、各メディアが共通で情報を共有して公表することにより、Covid-19によって引き起こされている感染拡大状況や新規感染者数、死者数などのデータをブラジル人が知ることができるようにすることを目的に始動したという。

4月17日に更迭されたルイス・エンヒッキ・マンデッタ元保険相のもとでスタートした、同省による新型コロナウイルス パネルデータでは17時代に情報が開示されていた。

6月2日(火)までは、新型コロナウイルス感染症に関する国内のデータはブラジル保健省によって夜の19~20時ころに公表されていたが、6月3日(水)以降は発表が夜の22時に遅らされていた。発表時間を遅らせたのは、ニュースの視聴率が高い時間を避けるためではないかと指摘されていた。

さらに6月5日(金)、データを公表していたパネルは「更新中」と記されアクセスできなくなっていたが、パネルが再開したときには、これまで公表していたデータのうち、全感染者数、全死者数は公表されず、全国、各州共に新規の退院者数、新規の感染者数、新規の死者数のみが公表されていた。同時に、統計のグラフなどを示したページも再駆除された。

6月7日(日)には、ブラジル保健省のパネルでいったん公表された新規の死者数が下方修正された、各メディアがこれを報じて物議をかもした。

保健省が公表するデータが制限されたことを受け、同日18時、国家保健評議会(CONASS)は独自にパネルを発表して、新型コロナウイルス感染症の集計データを発表した。

各メディアによる独自のデータ公表は、この一連の騒動を経て行われた。

「エスタード・ジ・サンパウロ」は、連邦政府は保健省を通じて公表するこれらの数字の正しい情報源でならねばならないにもかかわらず、政府と大統領自身によるここ最近の行動には疑問を抱くと述べている。

国家保健評議会(CONASS)が8日(月)18時に発表した時点で、Covid-19の感染者累計は707,412人、新規の感染者数は新規感染者数は15,654人、死者累計は37,134人、新規の死者数は679人だったが、同日20時02分にメディア連合チームのひとつであるグローボ系列の「G1」の発表によると、感染者累計は710,887人、新規の感染者数は新規感染者数は19,631人、死者累計は37,312人、新規の死者数は849人となっていた。

(文/麻生雅人)