【ブラジル】先住民保護区で、牧夫が待ち伏せ銃撃を受け死亡
2025年 12月 17日

12月15日(月)、パラー州南東部サンフェリス・ド・シングーのアピテレワ先住民領で、ブラジル環境再生庁(Ibama)に雇われて違法飼育牛の撤去作業を行っていた牧夫が銃撃を受けて死亡した。現地メディア「G1」、「アジェンシア・ブラジル」などが伝えている。
違法飼育牛の撤去作業は、最高裁判所(STF)が命じた「不法占拠排除」の一環で行われていたオペレーションの一環として行われていたものだった。作戦は、先住民以外の占拠者や違法に飼育されている牛を領域から撤去することを目的としている。
現場は、現地で“ヘルメット道”と呼ばれている街道にある“10番地”と呼ばれる地域で、牧夫は他の仲間とともに、侵入地域から違法飼育牛を搬出するため、森の中の狭い支道を通って約350頭の牛を囲い場へと追っていた。
牧夫が群れから離れて放牧されていた牛を集めようとしていた時、待ち伏せ攻撃に合い、至近距離から首に銃弾を受けたという。
支援チームは現場で応急処置を試み、ヘリコプターでサンフェリス・ド・シングー市立病院へ搬送したが、牧夫は傷のため命を落とした。遺体は空路でヘリコプターにより作戦拠点へ移送された。
現場には軍警12人と民警4人が配置されており、連邦警察もすでに複数の捜査官を先住民領に派遣している。
「G1」の取材によると、襲撃が発生した際、現場には先住民は居合わせていなかったという。
環境当局の推計によると、最高裁判所(STF)の命令に基づく不法占拠排除作戦は、先住民領内に約45か所に分散して存在するおよそ1,300頭の違法飼育牛の撤去に重点を置いているという。
ブラジル環境再生庁(Ibama)は公式声明を発表し、作戦チームが「STFの司法決定を履行する過程で攻撃の標的となった」として、牧夫の銃撃による死亡を確認した。さらに、関係当局が事件の責任者を特定し、法に基づいて処罰するため捜査を進めていると明らかにした。
同庁は犠牲者の家族や友人に哀悼の意を表するとともに、「司法決定の履行、先住民領の保護、そして他の公的機関との統合的な活動へのコミットメント」を改めて強調した。
作戦には、先住民省(MPI)、国家先住民財団(FUNAI)、ブラジル情報庁(ABIN)、国家治安部隊、連邦警察、州警察(民警・軍警)、パラー州農業防衛庁(Adepará)のチームが参加している。
パラカナ族が居住しているアピテレワ先住民領は、アマゾン地域でも最も紛争の多い地域のひとつとして知られる。長年にわたり侵入の標的となっており、2025年9月以降は国内最大規模の統合的な不法占拠排除作戦の舞台となっている。
同先住民領は、ブラジル国内で4年連続で最大の森林伐採を記録した過去があり、アマゾン人間・環境研究所(IMAZON)の調査によると、失われた森林面積は都市フォルタレーザよりも広大だという。
(文/麻生雅人)




