米国の対ベネズエラ行動は多国間秩序への脅威、と専門家が指摘

2026年 01月 5日

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1月4日、ニューヨーク。ベネズエラでの身柄拘束後、ニューヨークに到着し米麻薬取締局(DEA)本部に移送されたニコラス・マドゥーロ大統領(写真/RS/Fotos Públicas)

アメリカ合衆国が1月3日(土)にベネズエラに対して実行した、ニコラス・マドゥーロ大統領の排除を目的とした攻撃は、多国間機関および中南米諸国に対するリスクをもたらすものだと、アジェンシア・ブラジルが取材した専門家らは評価している。

米軍は同日、マドゥーロ大統領とシリア・フローレス大統領夫人をベネズエラ領内から強制的に連行する作戦を実行し、その過程で大統領側の警護要員を死亡させ、首都カラカスでは爆発も発生した。マドゥーロ氏はニューヨークへ移送された。米政府によると、同氏は国際的な麻薬取引への関与疑惑について米国内で訴追を受ける見通しだという。

サン・フランシスコ・ジ・アッシス大学(Unifin)の国際関係学の政治学者、ブルーノ・リマ・ホッシャ教授は、土曜未明に行われた今回の侵入作戦について、「何よりもまず本件は、米国による、一国家の主権に対する攻撃である」と指摘する。

「まず第一に、国際法には、米国が世界の警察として行動することを認める証明書のようなものは存在しない」(ホッシャ教授)

「第二に、仮にニコラス・マドゥーロ氏に対する非難が事実だったとしても――実際には事実ではないが――、国連や国際機関の枠組みは、米国に対して、主権国家に侵入し、(国民を)“誘拐“し、拘束する権限を委ねてはいない」(ホッシャ教授)

米政府がベネズエラへの攻撃を正当化する根拠として挙げているのは、マドゥーロ氏が米国内の麻薬市場に供給する「麻薬テロ組織」と結びついているという疑惑である。

「法的観点から見れば、これは全くの不条理だ。純然たる帝国主義的侵略だ」とホッシャ教授は述べ、ニコラス・マドゥーロ大統領に対する今回の行動を「誘拐」と位置づけるとともに、世界最大の埋蔵量を持つベネズエラの石油を米国が奪おうとしている危険性を警告した。

ホッシャ教授によると、米国の関心を引く鉱物資源を保有するラテンアメリカ・カリブ地域内の他国も、同様のリスクにさらされる可能性があるという。

ブラジルの場合についてホッシャ教授は、仮にブラジルが国内の重要鉱物の採掘を国家独占とする方針を選択した場合、そのリスクは高まる恐れがあると分析する。さらに同氏の見立てでは、この分野でロシアや中国と協定を結ぶことや、取引にドル以外の通貨を用いることも、緊張を高める要因となり得るという。

ただしホッシャ氏は、ブラジルの法制度はその方向には進まないだろうとの見方を示す。なぜならブラジルは戦略鉱物やレアアースを実質的に独占しておらず、また外国企業が国内の鉱物や石油を、国家機関の規制のもとで採掘することを認めているためである。

<ブラジルは「微妙な立場」>

サンパウロ大学(USP)ラテンアメリカ統合大学院共同プログラムの教員であり、ブラジリア・カトリック大学(UCB)でも教鞭をとるグスターヴォ・メノン教授は、現在の地政学的状況の中で、ブラジルは「非常に微妙な立場」に置かれているとの見方を示す。

メノン教授の評価によると、ブラジルは今後も外交と協調を基盤とした対応を続ける方針であり、人権擁護、内政不干渉、紛争の平和的解決を重視してきた同国の伝統に沿った対応を続けるとみられる。

「ブラジルは、南米の領域で行われた今回の直接的な武力介入を非常に深刻に受け止めている。ブラジル外務省の立場としては、まさにデルシー・ロドリゲス氏(ベネズエラ副大統領)を暫定大統領として正統とみなす方向性を示している」
(メノン教授)

グスターヴォ・メノン教授は今回の米国の行動について、国際法を律する原則と同国の国内法の双方に対する違反に当たると指摘する。同氏によると、この軍事行動については米国議会の承認が得られておらず、ニコラス・マドゥロ大統領の拘束を目的とした法令や令状の発付も行われていないという。

「米国によるこの前例のない行動は、南米を“平和の地域”として維持してきた状況を崩しかねない」(メノン教授)

<多国間機関の危機>

国際的な観点から研究者らは、第二次世界大戦後、国連体制の創設とともに構築された多国間システムが、今回の事態によって深刻な打撃を受けたと指摘している。

「本質的には、私たちはこの多国間システムの崩壊を目の当たりにしている。この制度的枠組みは、もはや粉々になってしまった」(メノン教授)

ブルーノ・ホッシャ教授によると、今回の米国の攻撃は、ドナルド・トランプ大統領が「第二次世界大戦後に創設された諸制度を“ごみ箱に放り込んだ”ことを示している」という。

「21世紀という観点から見れば、これは新たな局面だ。第二次大戦後の調整を試みた国連体制は、いまや米国自身の手によって解体されつつある」(ホッシャ教授)

<今後の展開>

メノン教授は、米国が今後この地域でどのような行動に出るかについて、注意深く見守る必要があると指摘する。

「というのも、石油の問題が本質的な要素であり、ベネズエラは世界最大の石油埋蔵量を持つ国であるうえ、アマゾン地域に属する国でもあるからだ」(メノン教授)

研究者はさらに、南米を豊富な天然資源を有する特権的な地域として捉える必要があると強調し、同地域が現代の地政学的・地経済的な競争の只中に、これまで以上に深く巻き込まれていると指摘した。

USPとUCBの教授であるメノン氏は、ドナルド・トランプ氏が発表した、ベネズエラの石油資源を管理下に置くという“管理権限”がどのような形を取るのか、現時点では見通せないと述べている。

「今のところ私が見る限り、米国は北京とモスクワに対し、ラテンアメリカは歴史的に米国の影響下にある地域だという明確なメッセージを送っている。そしてそれ以上に、“力こそが物を言う”という論理がますます支配的になりつつあることを示している」(メノン教授)

ブルーノ・ホッシャ教授は、極右の指導者を抱える超大国が、ラテンアメリカの主権国家に侵攻するという事態を目の当たりにすること自体が深刻だと指摘する。

「これは、他のすべての国々に対する脅威を意味する。ベネズエラのような直接的な軍事介入であれ、アルゼンチンの議会選挙で見られたような金銭的報奨をちらつかせる圧力であれ、あるいはホンジュラスでのような不正操作の実行であれ、いずれの形であってもだ」(ホッシャ教授)

(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)