リオ市の黒人文化の聖地で行進を行うブロッコ「ベッサメムーチョ」

2026年 02月 11日

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リオ市旧市街区「小アフリカ」エリアに位置し、黒人文化史上でも重要な歴史地区であるプロヴィデンシアの丘で行進するブロッコ「ベッサメムーチョ」(写真/Tânia Rêgo/Agência Brasil)

リオ市旧市街区にあるプロヴィデンシアの丘で2月8日(日)、ストリートカーニバルのブロッコ「ベッサメムーチョ」が行進を繰り広げ、ラテンアメリカのリズムとブラジルのバトゥカーダを融合させた音楽に、南米大陸の連帯を訴える政治的メッセージを重ねた。

集合地点となった、リヴラメント坂との角に位置するコスタ・バホス通りの階段には、地域住民、移民の音楽家、市内各地から訪れたカーニバル参加者が集まった。

同ブロッコは、長年この地域で活動してきた複数の文化団体──その中には、プロヴィデンシア発祥の「コルテジーニョRJ」も含まれる──を母体として生まれた。

ベッサメムーチョは、街路を文化的に“取り戻す”という行為そのものを、政治的なジェスチャーとして位置づけている。主催者は「『小アフリカ』と呼ばれる歴史的地区の路地でラテン音楽を奏でるという行為の“意義”こそが抵抗なのです」と述べ、ブラジルにおけるファヴェーラ発祥の地であるプロヴィデンシアの丘との歴史的な結びつきを強調した。

参加者の中には、マドリードからリオに来て“初めてのカリオカのカーニバル”を満喫している21歳のスペイン人、アンドレス・マルティンさんの姿もあった。彼は、このブロッコは自由を象徴していると語る。

「みんなが好きなように振る舞える。それこそがカーニバルであり、ラテンアメリカ文化が体現しているものです」(アンドレス・マルティンさん)

マルティンさんにとって、この行進への参加は、米国の移民政策について考えるきっかけにもなったという。

「移民が置かれている状況、特に子どもたちの扱われ方は、問題を限界まで悪化させているようなものです」と述べ、ドナルド・トランプ政権の政策に言及した。

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リオ市旧市街区「小アフリカ」エリアに位置し、黒人文化史上でも重要な歴史地区であるプロヴィデンシアの丘で行進するブロッコ「ベッサメムーチョ」(写真/Tânia Rêgo/Agência Brasil)

ブロッコ「ベッサメムーチョ」のバンドメンバーで、7年半前からブラジルに暮らすベネズエラ人の生物学者サロメさんは、ストリートカーニバルが持つ政治的側面を強調した。

「カーニバルは抵抗の運動であり、闘いであり、街の空間を自分たちの手に取り戻す行為なんです」と語った。

サロメさんによれば、このブロッコの提案はラテンアメリカ的な帰属意識という考え方と直接結びついているという。

「ブラジルはラテンアメリカです。分断して考える理由がわかりません。国境は人間がつくったもので、私たちの頭の中にあるだけ。私たちは地球の住人なんです」(サロメさん)

サロメさんは、街は、文化やアイデンティティをめぐる象徴的なせめぎ合いの舞台だと強調する。

「リオで私が大好きなのは、街が人々のものだという点です。祭りも出会いも、すべて街で起きる。だからこそ、この空間を占有し続けることが大切なんです」と述べた。

社会学者であり、ブロッコのメンバーでもあるアンドレ・ヴィデイラ・ジ・フィゲイレード氏は、「ベッサメムーチョ」の政治性はその音楽的提案と切り離せないと指摘する。

「これはラテンアメリカ音楽のブロッコであり、その中にはブラジル音楽も含まれます。私たちはラテンアメリカという大きな政治的集合体の一部だと理解しているのです」と語った。

移民が多数を占めるブロッコは、カーニバルのように注目が集まる場面では、より大きな責任を担うことになると同氏は続ける。

「北米以前の“もうひとつのアメリカ”という考え方、自由なラテンアメリカという理念を語ることは、私たちに課された使命です」(フィゲイレード氏)

長年このブロッコに参加している編集者のフェリペ・エウジェニオ・サントス・エ・シウヴァ氏は、「ベッサメムーチョ」はブラジルが大陸から切り離されているという誤った認識を打ち破る役割を果たしていると評価する。

「ブラジルはラテンアメリカから距離を置き、この国は特別な存在なのだという考えがあります。しかしこれは大きな誤りです。ブロッコは、私たちを“エルマノス”の文化、音楽、生き方とつなぎ直してくれるのです」(シウヴァ氏)

同氏は、文化的抵抗は政治的意識も生み出すと指摘する。

「カーニバルは祭りですが、人々の間に共通のアイデンティティをつくり出す場でもあります。政治的な意識が芽生える“入口”のような場です」(シウヴァ氏)

リオ出身の実業家マイケル・ピニェイロ氏も、ストリートカーニバルの政治的役割を強調した。

「カーニバルは、ブラジルという国が最も率直な形で姿を現す場です。世界に向けて、私たちがどんな国民なのかを示すものなんです」と語り、カーニバルは「最初から最後まで政治的な表現なのです」と述べた。

「歴史的に、カーニバルは人々自身を教育してきました。社会が社会自身と対話するためのコミュニケーション手段なんです」(マイケル・ピニェイロ氏)

社会学者ホドリゴ・フレイタス氏は、プロヴィデンシアの坂道で行われる行進はラテンアメリカ的なアイデンティティを強化するものだと指摘する。

「これは抵抗の行為です。坂道で行進するブロッコは、ラテンアメリカの坂道と私たちをつなぎ、帝国主義に抗う必要がある民衆としての自覚を呼び起こすのです」(ホドリゴ・フレイタス氏)

同氏は、「ベサメムーチョ」のような取り組みは、ブラジルが大陸の一部であるという認識を更新する役割を果たすと述べた。

「私たちはラテン系の人間です。こうしたブロッコは、その意識を新たにしてくれるのです」(ホドリゴ・フレイタス氏)

リオのストリートカーニバルでは、2026年に計432のブロッコが公式に行進を許可されている。プログラムは2月22日まで続き、予定は「Blocos do Rio 2026」アプリおよび市の公式ストリートカーニバルサイトで確認できる。

(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)