経済学者マリアナ・マッツカート氏、カーニバルへの投資効果は工業分野を上回ると指摘

2026年 02月 11日

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マリアナ・マッツカート氏は、カーニバルが地域社会に対して、社会的な恩恵やウェルビーイングといった効果をもたらしていると指摘する(写真/Tânia Rêgo/Agência Brasil)

文化・芸術への投資──その中にはカーニバルも含まれる──は、自動車産業など伝統的な工業分野への投資よりも、経済にもたらすリターンが大きい。ブラジルを訪れ、カーニバルを中心とした創造経済を調査したイタリア系米国人経済学者マリアナ・マッツカート氏は、アジェンシア・ブラジルのインタビューで、ブラジル最大の祭典が持つ経済的・社会的な影響力を強調した。

「芸術や文化への公的投資は、伝統的な製造業の多くよりも、はるかに大きな経済効果を生みます」(マッツカート氏)

「それにもかかわらず、政府は依然として従来型の産業セクターに多くの資金を投じています。経済的根拠は出そろっているにもかかわらず、あたかも存在しないかのように扱われているのです」(マッツカート氏)

ブラジルでは、文化分野に1レアルを投資すると、雇用や所得を通じて 7.59レアル の社会的リターンが生まれる。一方、自動車・トラック産業に1レアルを投じた場合の乗数効果は 3.76レアル にとどまる。これは、ジェトゥーリオ・ヴァルガス財団(FGV)とブラジル産業開発庁(ABDI)の調査による数字だ。

世界で最も影響力のある経済学者の一人であり、『企業家としての国家』の著者として知られるマリアナ・マッツカート氏は、カーニバルが多くの地域社会──その多くは脆弱な状況に置かれている──に対して、社会的な恩恵やウェルビーイング、メンタルヘルスの向上といった効果をもたらしていると指摘した。

「カーニバル期間中の食事や飲み物、ホテル、観光の話だけではありません。重要なのは、技能、学校、ネットワーク、社会的結束の価値、アイデンティティや文化的遺産といった社会的インパクトなのです」(マッツカート氏)

マッツカート氏は、祭りの背後にある経済を理解するため、リオデジャネイロとサウヴァドールを訪問した。次回の来伯時にはヘシーフィにも足を運ぶ予定だという。

アジェンシア・ブラジルによる独占インタビューの全文は以下。

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アジェンシア・ブラジルのインタビューに応じる経済学者マリアナ・マッツカート氏(写真/Tânia Rêgo/Agência Brasil)

アジェンシア・ブラジル(以下、A):あなたの研究では、芸術と文化は経済発展にとって周縁的なものではなく、本質的な役割を果たすと指摘しています。ブラジルのような国では、文化、芸術、そしてカーニバルはどのようにして経済的繁栄を後押しできるのでしょうか。

マッツカート氏:私が主張しているのは、産業や特定のセクター単位で成長や発展を考えるべきではないということです。むしろ、「すべての人に健康を」「より持続可能で包摂的な経済を」といった“ミッション”を軸に据え、それが経済のあらゆる分野にとって何を意味するのかを問い直す必要があります。

カーニバルはその縮図です。開催時期は年に一度ですが、実際には一年を通じて、音楽、パーカッション、歌、衣装、装飾、そして壮大なパレードなど、芸術・文化分野における驚くべき活動の連鎖が存在しています。

エスコーラ・ジ・サンバ(サンバ団体)そのものが、技能の習得、人脈形成、自信の向上、人々が自らの価値を感じられる場として、非常に大きな可能性を持っています。

文化分野は多くの人々を巻き込むため、乗数効果が高いのは事実ですが、その影響はさらに広範囲に及びます。

カーニバル期間中の食事、飲み物、ホテル、観光の話だけではありません。重要なのは、技能、学校、ネットワーク、価値観、社会的結束、アイデンティティや文化的遺産といった社会的インパクトなのです。

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リオ市港湾地区サンバシティにあるベイジャ=フロール・ジ・ニローポリスの作業場。カーニバル用衣装の制作が行われている(写真/Tânia Rêgo/Agência Brasil)

A:あなたは、芸術や文化が経済に果たす役割が、政府や専門家によって過小評価されていると主張してきました。なぜでしょうか。

マッツカート氏:1レアルを投資したとき、経済全体にもたらされるリターンは、自動車産業よりも大きいのです。これは世界的に見ても同じで、芸術や文化への公的投資は、伝統的な製造業の多くよりもはるかに大きな経済効果を生みます。

それにもかかわらず、政府は依然として従来型の産業セクターにより多くの資金を投じています。経済的根拠は出そろっているにもかかわらず、あたかも存在しないかのように扱われているのです。

しかし最終的には、私たちが芸術や文化を十分に重視していないからこそ、投資が行われていないのだと思います。経済報告書が「投資すべきだ」と示していないからではありません。

A:一部の専門家は、公的支出に厳格な財政上限を設けるべきだと主張しています。これは、カーニバルを中心とした創造経済を後押しする力を妨げることになりますか。

マッツカート氏:興味深いのは、戦争や国防となると、資金が“どこからともなく”出てくる点です。誰も「まず税収を確保してから投資すべきだ」とは言いません。そこには明確な目的があるため、政府は先行購入契約を使って資金を動かします。

その際、「お金がない」といった虚構の物語はつくられません。ところが教育、医療、文化といった分野になると、突然「お金がない」と言い出す。あるいは「医療に投資するなら教育を減らすべきだ」「教育を増やすなら文化を削るべきだ」といった議論になります。

こうした考え方こそが、経済を誤って理解する方法です。大胆で、戦略的で、社会を鼓舞するような目標を掲げ、それが複数の分野への投資を必要とするものであれば、経済の生産能力はむしろ活性化し、拡大していきます。たとえ費用がかかったとしても、最終的にはGDPが伸びるのです。

重要なのは、「私たちは何に投資しているのか」という点です。そして私は、文化は極めて重要な分野だと考えています。演劇や視覚芸術、カーニバル、そしてそれを支える一連の活動──これらへの投資は、経済の目的そのものを再構想する助けになるはずです。

A:芸術や文化は公共の安全にどのような役割を果たすのでしょうか。

マッツカート氏:若者の犯罪率が高い地域というのは、多くの場合、その若者たちが強く疎外されている場所です。自分の身体に価値を感じられない状況では、他者の身体にも価値を見いだせなくなってしまう。

だからこそ、芸術や文化、創造経済への投資は、犯罪を減らす一つの方法になり得ます。もちろん、それだけを目的に投資すべきだという話ではありませんが、地域レベルでは、芸術や文化への投資がもたらす社会的な恩恵やウェルビーイングの効果が非常に広範囲に及ぶという興味深いエビデンスがあります。

それらは、人々の心身の充実感、社会的結束、レジリエンスの向上に寄与し、最終的には犯罪の減少にもつながり得るのです。

A:ブラジルでは、芸術や文化への公的投資に疑問を呈する社会的・政治的な層も存在します。こうした経済を発展させるうえで、国家はどのような役割を果たすべきでしょうか。

マッツカート氏:無駄遣いだと批判する人たちの多くは、農業ビジネスやその他の産業に対して巨額の補助金が支払われていることについては、ほとんど異議を唱えません。ここでも結局、私たちが何を価値あるものと見なしているのかが問われているのです。

もっとも、補助金の設計そのものが問題を抱えることもあります。だからこそ、より良い指標や評価基準が必要です。私は、「国家が文化に投資すべきかどうか」ではなく、「国家はいかにして文化に投資すべきか」を問うべきだと考えています。

多くの国で、公的投資は民間投資を呼び込むうえで決定的な役割を果たしてきました。

A:カーニバルを中心とした創造経済において、民間セクターはどのような役割を果たすべきでしょうか。

マッツカート氏:民間セクターとは、公共目的に沿った形で協働する必要があります。つまり、実験やイノベーションを促し、さまざまな分野で民間投資を引き出すような仕組みをつくることです。これは計画のあり方そのものが問われる課題です。

私たちが望んでいるのは、単に民間企業に資金を渡し、誰か個人が「税金を払う代わりに、自分が価値があると思うプロジェクトをスポンサーする」という形にすることではありません。それが最適な方法だとは思いません。

A:ブラジルのカーニバルをご覧になって、特に印象に残った点は何でしょうか。

マッツカート氏:ブラジルのカーニバルは世界的に有名です。そのため大きな乗数効果を持ち、20億ドル以上の収益を生み出しています。しかし、それだけではありません。

カーニバルは、芸術や文化に関わる多様な活動が、「よりよく生きる」という感覚──喜びに満ちたウェルビーイング──と結びつく瞬間です。しかもその多くは、ファベーラのエスコーラ・ジ・サンバ(サンバ団体)のような、社会的に脆弱な地域で起きています。

私は、カーニバルが創造経済の中心的な要素として機能する“プラットフォーム”や“システム”になり得ると考えています。ブラジルの人々はこれを大いに誇るべきですが、同時に権力関係の存在も忘れてはなりません。誰がアクセスできるのか。商業化が進みすぎていないか。資金はどこへ流れているのか。

例えばスポンサー料は、こうした驚くべき創造性を生み出すコミュニティやエコシステムに再投資されているのでしょうか。私は、これこそが将来に向けて最も重要な問いだと思います。

私はイタリアのヴェネツィア近郊、パドヴァの出身で、そこにもカーニバルがありますが、地域に根ざしておらず、若者が参加するための準備もありません。言ってしまえば“死んだカーニバル”です。

ここブラジルには“生きたカーニバル”があります。これを長期的な投資として捉え、創造経済の中心に据えるべきだと考えます。

マッツカート氏は現在、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)が主導し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が協力する研究プロジェクトを率いており、芸術と文化が国家の経済発展に果たす役割を調査している。

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リオの伝統的なラテン系ブロッコ「ベサメ・ムーチョ」は、移民問題や米国による制裁・迫害への抗議をテーマに行進した(写真/Tânia Rêgo/Agência Brasil)

カーニバルの創造経済

ブラジリアで連邦政府の担当者らと会合を行ったマリアナ・マッツカート氏は、カーニバルをブラジルの創造経済を拡大するための中核的なプラットフォームと位置づけるべきだと主張した。創造経済とは、知的資本や文化的資本、創造性を基盤に雇用と所得を生み出すビジネスモデルを指す。

同氏はまた、「文化に投資するお金がない」という主張に疑問を呈し、文化分野が犯罪減少に寄与する点を改めて指摘したほか、カーニバルが所得の集中をさらに進めるリスクにも注意を促した。

「権力関係が存在することを常に忘れてはなりません。誰がカーニバルにアクセスできるのか。商業化が進みすぎていないか。資金はどこへ流れているのか。スポンサー料は、この驚くべき創造性を生み出すコミュニティやエコシステムに再投資されているのでしょうか」と問いかけた。

今回の訪問は、文化省との協力の一環で、カーニバルや文化・芸術を中心とした経済を後押しする公共政策の構築に役立つ経済指標を策定するための取り組みの一部となっている。

(記事提供/Agência Brasil、構成/麻生雅人)